おさかな雑録
No.95 ハナザメ 2014年8月13日
サメは難しい
ハナザメ 全長約2.7m 平成26年8月12日撮影
まき網の荷捌き場にて、ほれぼれとする造形が目に留まりました。巨大なサメがパレットの上に、剥製の陳列のごとくおいてあります。一目見て、あまり頻繁に見る種ではないことがわかりましたが、サメの同定は一筋縄でいかないことも多く、「これはシロワニですか?」と聞かれたものの、「わかりません」としか返事できませんでした。それで、なんとか種を同定できないかとあちこち写真を撮影し、研究所に帰って検索を行いました。
まず全体の画像から、高速遊泳に適した紡錘形の体や鰭の形、尾柄背面のくぼみにより、メジロザメ科であることがわかります。メジロザメ科には数多くの種が含まれ、画像による同定は困難であることも珍しくありません。
この個体は吻が細長く尖り、第2背鰭が第1背鰭よりかなり小さく、ふたつの背鰭の間隔は第1背鰭の高さの2.7倍程度であることがわかります。また、第2背鰭と臀鰭の起部はほぼ同じ位置にあり、第1背鰭の起点は胸鰭内角より後方にあります。各鰭の先端は白くはなく、一部は黒くなっていますが、尾鰭の後縁は黒く縁どられていません。
ハナザメ 全長約2.7m 平成26年8月12日撮影
背面から体後半と尾部を見ると、尾柄部やふたつの背鰭の間には隆起線がありません。
ハナザメ 全長約2.7m 平成26年8月12日撮影
さらに、目の後縁には欠刻がありません。
これらの特徴から、この個体はハナザメであることがわかりました。次に見かけたときにはこれらの作業を現場でできるようになりたいものです。せめて、ハナザメか、そうでないかくらいの区別はやってみようと思います。
ハナザメ 平成24年7月18日撮影
さて、ハナザメが過去に漁獲されていないか、手持ちの画像データを調べたところ、少なくとも2件の記録がありました。上の画像では10㎝程度のカタクチイワシが一緒に写っています。全長はおそらく下の画像と大差ないと思われます。
ハナザメ 全長約1.5m 平成23年9月12日撮影
どちらの画像と比べても、2.7mもある今回のハナザメは圧倒的に大きいことがわかります。また、今回も含め、ハナザメの記録は3回とも暑い時期です。暑い時期に来遊する種なのか、漁獲されやすくなるのか、それとも単なる偶然か。目立つ魚なので、これからも注目していこうと思います。
(2014年8月13日掲載 企画・資源利用研究課)