旬のおさかな情報
カタクチイワシ
カタクチイワシ 南伊勢町奈屋浦 平成26年2月5日撮影
今年も大きなカタクチイワシが大回遊を経て熊野灘に来遊しました。
カタクチイワシは伊勢湾から太平洋のはるか沖合まで、およそ海ならばどこにでもいるといっても過言ではない魚です。そして、カタクチイワシの分布の中心は日本の漁業の手の届かないような沖合にあり、現状でも大量に漁獲されてはいるものの、資源全体からすれば、沿岸に生息する規模の小さな個体群、あるいは沖合群のうち、回遊の過程で一部が沿岸域に来遊し、漁獲されているにすぎないと考えられています。体は小さいですが、海洋生態系の中では大きな存在であり、極めて身近でありながら、実はよくわかっていないことも多い魚です。
カタクチイワシ 南伊勢町奈屋浦 平成26年2月5日撮影
この大きなカタクチイワシ、種としての最大級といえるほどの大きさで、この時期以外ではみかけることがなく、しかもまき網で大量に漁獲されます。それまで漁獲されていた魚とはサイズも漁獲量も明らかに異なるため、区別するのは簡単です。しかし、なぜ大回遊をしてきたといえるのでしょうか。
簡単にいえば、北海道の東方はるか沖合の太平洋において秋に行われる調査でこのようなカタクチイワシがみられ、冬に房総沖に南下することが知られているのですが、それらと熊野灘での体長や漁獲状況がつながるからです。いわば状況証拠ですが、そういった間接的な証拠の積み重ねも水産資源の調査においては重要です。
さて、これだけ大きなカタクチイワシ。味の方はと問われれば、やはりカタクチイワシとは思えない大きさで、1尾1尾に対峙しつつ味わえます。そしてしっかりとした肉の味わいがあってとてもおいしいです。体が大きい分骨は固いのですが、干物にすると骨ごといけるかもしれません。このカタクチイワシは人間の食用だけではなく、養殖魚のエサとしても大変重要で、この寒い時期にはとってもありがたい、はるか遠洋からの恵みといえます。
(2014年2月6日掲載 資源開発管理研究課)