旬のおさかな情報
サンマ
サ・塔} 南伊勢町贄浦 平成26年1月8日撮影
熊野灘の冬の風物詩、サンマです。 サンマは沖合を広く回遊する魚で、資源の大部分は大海原で一生を過ごしますが、一部は秋から春にかけて日本沿岸に来遊し、冬から春に産卵します。サンマにとって日本沿岸はかけがえのない産卵場というわけではないので、来遊は資源の大きさや、その時の海況にも大きく左右される不安定なものです。市場で聞いたところでは、今シーズンは現在まで水揚げが振るわないとのことで、熊野灘へ魚が到達しにくい状況が続いているようです。
さて、サンマといえば秋に脂ののったものを塩焼きで、というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、熊野灘のサンマは同じ魚とは思えないほど脂がありません。写真では分かりにくいのですが、体も薄っぺらく、ひょろひょろとしています。そしてそのまま塩焼きにして食べると、脂ののったものに比べおいしくありません。
しかし、これが干物になるとみごとに化けます。塩と太陽と風の力によってタンパク質から引き出されたうまみは、固い身を噛みしめるほどに増し、ごはんと一緒に口に頬張ると、えも言われない幸福をもたらしてくれます。そして、この干物には冬の冷たい風が必要であり、脂は干物の熟成には無用の長物となります。熊野灘のサンマは、まさに干物になるために泳いでくるような魚。先人たちの知恵もさることながら、大自然の恵みに感謝感激すること請け合いです。
サンマ 南伊勢町贄浦 平成26年1月8日撮影
サンマの鮮度の良い目印として、下顎の先が黄色いということが言われますが、今回じっくりと眺めていると、とれたてのサンマでは黄色というか山吹色をしていました。「黄色っぽい」といえば同じように聞こえますが、自分がこれまで食べてきたサンマはもっと薄くてレモン色に近いイメージです。鮮度の良いサンマを追及するなら、下顎の先の黄色がより濃いものを選ぶとよいかもしれません。
(2014年1月9日掲載 資源開発管理研究課)