酢締め
魚には定番の食べ方があります。刺身、塩焼き、煮付けなどがこれにあたります。多くの方がおいしいと思い、魚の味がよく分かるすばらしいシンプルな調理法です。しかし、いつも同じ方法では飽きてしまうのも事実。今回は、ちょっと手間は掛かりますがご飯やお酒との相性が抜群の酢締めの作り方をご紹介します。
酢締めに向く魚は、身の柔らかい魚が多いようです。また、酢の味は強いため、魚の味が負けてしまわないように、旨味の十分ある魚を選びましょう。おすすめは、サバ類、サワラ、イワシ類、コノシロなどの背の青い魚です。また、カマス類、マダイ、カワハギなど白身の魚もおいしくいただけます。
アカカマスの酢締め(鷹の爪がアクセント)
作り方
魚は3枚におろして、肋骨を包丁を寝かせて切り取ってください。背身と腹身の間には骨がありますので、これも毛抜きなどで抜き取ります。小さなイワシ等の小魚であれば頭と内臓を取り除いて、中骨をつけたまま漬け込んでみましょう。
身をバットに並べてたっぷりと振り塩をしてください。振り塩により、身の表面のたんぱく質を凝固させ、旨味が逃げ出さないようにします。(塩と同時に砂糖を振り掛ける方法もあります。塩味が抑えられ味がマイルドになる効果もありますが、魚が本来持つ甘味が損なわれてしまうという欠点もあります) 振り塩の後15分くらい塩をなじませたら、さっと水で洗い流し、酢で水を洗い流します。そうしたら、食べる30分くらい前まで、ラップに包んで冷蔵庫に入れておきましょう。酢には昆布を一片入れておき冷蔵庫で冷やしておきます。酢には、昆布茶、柚子やカボスなどかんきつ類の皮と果汁も入れておくと香りがよいです。小さなお子さんがいなければ、鷹の爪(干したもの、生のものそれぞれおすすめです)を刻んで入れましょう。
伊勢湾では年中出回るサワラの酢締め(3kgのものを調理しました)
さて、酢に漬ける時間は15分くらいから数日までお好みでどうぞ。漬ける時間はそのときの温度や酢の濃さ、そして魚の種類やフィレの大きさにもよります。半日以上漬けておくとたいてい中心部分まで酢が滲みわたります。そのまま酢に漬けておくと2~3日は保存できますので保存食としてご賞味下さい。上の写真のカマスのように、身が薄いものは酢に漬けたまま食卓に出し、まるごと食べましょう。
また、上の写真のサワラのように大きな魚でつくったものは、刺身をつくるようにそぎぎりをします。薬味にはお好みでショウガやワサビなどでどうぞ。皮?そのまま切って食べましょう。皮にだって味がありますから。上の写真のサワラの酢締めでは皮をそのままつけて出しましたが、噛み切れないと不評でした。下のしめ鯖のように皮にだけ切れ目を入れた方がよかったかもしれません。長く漬けたものは、キュウリ、ワカメ、大根、ミョウガなどと一緒に合わせて酢の物としても大変おいしく頂くことができます。また、酢の中には昆布が残っているので、昆布は2mm程度の拍子切りにして食べちゃってください。
また、お好みでワインビネガー、リンゴ酢、バルサミコ酢など、いろいろな酢や、タマネギ、セロリなど一緒に漬け込む野菜を変化させて味のバリエーションを楽しんでみてはどうでしょう。洋風に仕立てたものは、パンにも相性が抜群ですよ!粒マスタードと一緒にお楽しみ下さい。
皮付きのしめ鯖。
メモ:ヒスタミンによるアレルギー様症状について
魚類、特に背の青い魚で鮮度の落ちたものにはヒスタミンというアレルギー様食中毒症状を起こす場合があります。「サバアレルギー」をいう言葉をよく聞き、蕁麻疹(じんましん)を発症したという事例を聞くことがありますが、この原因は実際にサバの筋肉に対してアレルギーというよりむしろ、鮮度が低下したサバ等を食べてヒスタミンによるアレルギー様食中毒を起こした場合が多いということです。また、サバに寄生するアニサキスという寄生虫に対しても、食中毒症状を起こす場合があります。実際にサバに対してアレルギーを起こす場合もありますが、もともとはヒスタミンによるアレルギー様食中毒症状を英語では「mackerel(サバの意) arergy」と表していることから、サバに特異的に起こる中毒症状と誤解して思われているようです。実際には、サバ、マグロ、カツオ、シイラ、カジキ、イワシ類、サンマ類等背の青い魚で発生することが多く、筋肉で増えるヒスタミン産生菌と呼ばれるバクテリアが筋肉中のアミノ酸の一つヒスチジンをヒスタミンに変化させることで生じます。サバを酢にして食べたりすることが多いのは、経験的に酢による殺菌効果を期待した、古くからの食の知恵だったのでしょうね。言うまでもなく、刺身、酢締めにするには鮮度の良いものを用いましょう。