シロギス
シロギスは浅い海にすむ大変美しい魚で、夏に漁獲の最盛期を迎えます。大きなものは25cmを超え、釣りでは優しげな姿に似合わず引きがよいことから人気があります。身は白身で、きめ細かい柔らかな舌触りと上品な味わいが楽しめます。三重県では伊勢湾をはじめとして各地で刺し網、定置網などで漁獲されています。
シロギスの調理法として代表的なのは、天ぷらです。旨味は十分でも脂は少なめなのがシロギスの身ですから、天ぷら、あるいはフライなどの調理法で油を加えると一層美味しくなります。天ぷらにする場合には、開いて背骨を取り除く必要があります。細くて硬く鋭い骨がありますので、骨ごと食べるのは避けたほうが無難かもしれませんね。ウロコを取り除いてからシロギスの頭を胸鰭の後の部分で切り落としてください。切り口をおなか側から肛門まで切り、内臓を取り除き、背骨のところに内臓が残らないようによく水洗いします。さかな用に歯ブラシを調理道具として用意しておくと重宝しますよ。その後包丁(先端が細いものが使いやすい)で背骨に沿って切れ目をいれ、開いたら皮を上にしてまな板に開いておき、中骨を取り除いてください。このようにして開いたものを、天ぷら、フライなどに用いましょう。最近では、天ぷら用に開いてあるものもスーパー売られていますから便利です。
また、単純ですが塩焼きもおすすめです。おいしい塩焼きを作るコツはくれぐれも焼き過ぎないようにすることです。ウロコと内臓を取り除いた身に、焼く直前に振り塩をして、身に水分が残っている程度に焼くと、ほのかな甘味とシロギスのやさしい香りが口の中に広がります。
このほか、ぜひ試してほしいのがお吸い物です。3枚におろした新鮮な身を、なるべく細長い棒状に切り、軽く振り塩をしたものを「結び」ます。結んだものに、くず粉をまぶし付け、熱湯でさっと火を通してからすぐに引き上げ粗熱を取ってください。熱湯で軽く加熱することで、結んだ形を固定し、椀ダネとして用います。出汁は鰹出汁に昆布を足したもの。また、椀ダネにせずに結んだものを冷蔵庫で冷やし、梅肉醤油(梅干をまるごとお湯に漬け塩気を抜いたら種を取り除き裏ごしをして、煮切り酒と薄口醤油で味を調えたもの。みりん少々を入れてもよいでしょう)で食べるのもおすすめです。湯びきの梅肉醤油和えではハモが有名ですが、シロギスでも繊細な味わいが楽しめますのでお試しください。
魚偏に喜ぶ、鱚と書いてキスと読みます。調理に手間がかかる小さな魚ではありますが、大きな喜びを与えてくれることはまちがいありません。