初夏の近海カツオ
三重県は日本でも有数のカツオの漁獲量(属人※注1)を誇っているにもかかわらず意外と知られていない理由は、三重県内の遠洋カツオの漁師さんはたいてい県外の港に水揚げをして、三重県の漁港にはあまり水揚げしないからでしょう。
黒潮がどこのあたりを流れているかによりカツオの近海漁場は日々変化してしまいます(※注2)が、おおむね初夏には三重県近海にカツオの漁場が形成されます。遠洋のカツオ一本釣りでのカツオと異なり、近海では日帰りでの引き縄漁法であるケンケン漁により1尾ずつ丁寧に漁獲される「ケンケンカツオ」は、その鮮度と旨さから比較的高値で取引されています。下の写真は生きたカツオです。生きている時には縞模様は不鮮明で、水揚げされると縞模様がくっきりと見えてきます。
カツオといえばたたきのイメージがありますが、新鮮なケンケンカツオは刺身もおすすめです。また、可能であれば皮付きのまま刺身にしてみましょう。頭の後ろから体の真ん中辺りまでの背中側にはしっかりとしたうろこがありますが、おなかの方(縞模様がある辺り)にはうろこがありません。獲れたての新鮮なカツオを入手されたら、腹側を皮付きで厚めに切り、ワサビと薄口醤油でカツオの身の旨味を味わいながらご賞味下さい。皮と身の間の風味のある脂と、カツオの持つ旨味が合わさって、口の中でカツオが大暴れする感覚が味わえることでしょう。皮が硬いと感じる方は、下の写真のように、たたきにしましょう。わずかに加熱された身から濃厚な味が染み出てくることで、香ばしさと合わさりこれまたおいしいものです。焼いたり冷やしたりが面倒な方は、皮つきで刺身に造った後に、金属製のバットに入れてバーナーで皮だけをあぶってください。
さて、中骨に残った身はスプーンで丁寧に取り分けておきましょう。柵で買った場合には、切るのに失敗した部分とか、刺身の残りを取り分けておき、これらの身を醤油と日本酒、すりゴマを混ぜたものに10分~2日くらい漬け込んでおいたものを、お茶漬けにしましょう。カツオは鰹節の原料となるくらい、もともと旨味の多い魚です。お茶漬けにすることで濃厚な旨味がご飯と合わさってとてもおいしい一品となります。大人の方は、ワサビやゆずこしょうを入れると味がピリッと締まります。お茶は沸騰したての熱いものにしましょう。温度が下がると生臭さが気になります。
また、カツオのフライも捨てがたい調理方法です。ただカツオは火を通しすぎると硬くなり、魅力が半減してしまいます。身の中心に火が通ったかどうか、ぎりぎりのところで食べるのがおいしい食べ方です。中がまだ火が通っていない状態で揚げ油から引き上げてください。余熱で火が通ります。火を入れたカツオの身はほのかな酸味が強調されます。大根おろしにちょっぴり甘味のある醤油を垂らし風味付けに柑橘を絞ったものを添えて、濃い目の味付にした方が、子供には食べやすいかもしれませんね。濃い味付けはご飯やビールなどによく合いますので大人も満足できることでしょう。
(※注1)
漁獲統計では、「属地」漁獲量というどこの漁港に水揚げされたかということを示す漁獲量(こっちが一般的なイメージに近い)と、「属人」漁獲量というどこの人が漁獲したかということを示す漁獲量があります。三重県の人が漁獲し県外で水揚げされたカツオの漁獲量は、属人統計上では多いものの属地統計上では少な目なのです。
(※注2)
カツオの近海漁場は、黒潮の縁辺部に形成されることが多いと言われています。水産研究所では人工衛星から送られる海面の温度や水位の情報等を解析して黒潮がどのように流れているかを推定し、画像データとしてインターネットで情報公開しています。この情報はカツオ等を漁獲する漁師さんが逐一チェックし、この情報を頼りに漁場を探します。昔には広い海をひたすら船で走り回りさかなに群がる鳥の群れを頼りにカツオ漁場を探し回ることが必要でしたが、この情報提供が開始されたことで、漁師さんたちは比較的ピンポイントで漁場を発見できるようになり、操業の効率化と省エネルギーに大きく貢献できるようになりました。
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(企画・資源利用研究課)