魚のアラ
魚は通常刺身や切り身にできる部分は通常全体の4割程度です。魚を3枚におろし、身(フィレ)を取った後の背骨周辺である中落ち、頭や骨の周がアラと呼ばれています。アラは調理には下処理が要りますが、コラーゲン、DHAやEPAなどの栄養に富んだ部分です。お手ごろな値段で売られており、大変おいしい食材ですから、今回は、旬の魚の「アラ」、それからマグロなど大きな魚の血合の部分の使い方をご紹介します。
頭・骨の周りのアラの下処理
タイ、ブリ、カンパチ、ヒラメ及び鮭のアラを小売店でよく見かけます。これらに共通した処理方法は、魚屋さんが取り残したウロコを包丁の先端でこすり落とすこと、骨の間などに付いた血の塊や、背骨の肋骨付近にある血の塊のようなものをよく水洗いして取り除くことです。(この血の塊は、生臭さのもとですからよく取り除いて!)できれば爪楊枝などで小さな隙間に入り込んだものをつつきながら落としましょう。
血の塊を取り除いたら、ボールに氷水を張って、アラを漬けましょう。プロの方は旨味が抜けてしまうということであまりこのような方法は行いませんが、家庭では少々抜けてしまってもよいではありませんか。生臭さを簡単に取り除くことを優先しましょう。1分位つけておくと、水には血が溶け出し赤く色づくことでしょう。その後水を切り、軽く塩と日本酒を振りかけて下ごしらえ第1段階は終了です。アラを塩焼きにしたり、蒸し物にするときには第1段階を経たアラを使ってください。潮汁、アラ炊きなど煮魚にするときには、霜降りと言って沸騰した塩入りのお湯で10秒ほど煮立たせ、その後氷水で急令した後に水道の水で流しながら残ったヌメリ、うろこや血の塊を洗い流す下処理第2段階まで行いましょう。
頭・骨の周りのアラの調理例
酒蒸し
さっぱりと日本酒と塩だけで、でき上がりに香り付けとして柚子等柑橘類の皮を散らすとさっぱりしますよ。また、日本酒の変わりに紹興酒、醤油の代わりに魚醤を代用した中華風の蒸し物もおすすめです。香菜(シャンツァイ、パクチー、コリアンダー)を散らすのが本格的ですが、ニオイが苦手な方はセロリの葉っぱを薬味として使う方法もあります。蒸すときに梅干を手でちぎったものを合わせてもサッパリします。できあがりに煙が出るほど熱したごま油を垂らしたら本格的です。
潮汁・味噌汁
潮汁はアラを煮立たせ、日本酒、塩(お好みで醤油を少々)で味を調えた椀物です。魚は主に白身の魚が合うようで、薬味として、ねぎ、三つ葉、セリ、柚子の皮などお好みで加えてください。また、赤身の魚(ブリやカンパチなど)は、味が強いのでみそ味でどうぞ。薬味にはねぎ、粉山椒、七味がおすすめです。また、アラを一旦グリルで焼いて、香ばしさを出してから椀ダネにするという方法もあります。これには、尾頭付きの塩焼きを食べ終わった残りの骨を用いるというバリエーションもありますのでぜひお試し下さい。
アラ炊き
アラ炊きには普通ショウガを一緒に炊き込みますが、ちゃんと下処理をした鮮度のよいアラならばショウガを使わずに炊いてみてください。純粋な魚の香りを楽しむことができます。また、ゴボウと煮合せてもゴボウの香りが魚に移りおいしいものです。
おいしく頂いた後の煮汁はたっぷりの旨味やコラーゲンが含まれており、捨ててしまうのはなんだかもったいないものです。一番のおすすめは、大豆から豆乳を絞った後の「おから」と一緒に炊き合わせることです。煮汁はざる等で一旦漉しとって骨を除きます。できれば煮汁には魚の身の破片が若干入っていた方がよいのですが、そこは状況に応じて・・・。煮汁とおからのほかにはゴボウのささがき、刻んだニンジン、20分戻してよく洗った芽ヒジキが具材としておすすめ。まずごま油で野菜をよく炒め、火が通ったら芽ヒジキを入れ、同時におからを投入します。よく炒まったら煮汁や塩醤油を加えて味を調えてでき上がりです。
フィッシュスープ
サケのアラを使ったレシピです。サケ類を用いるのは、圧力鍋で煮込んだときに骨まで柔らかくなるからです。下処理をしたサケのアラ(塩ザケを用いるときには十分に塩抜きをすること)をぶつ切りにして、セロリのぶつ切り、ニンニクのみじん切りを合わせて、水と一緒に圧力鍋で30分ほど骨まで柔らかくなるまで煮てください。圧力が下がったらフタを開け、トマトの缶詰、ニンジン、ジャガイモ、塩、コショウ、白ワインを入れ、柔らかくなるまで煮て完成です。食べるときには、パセリを多めに散らしましょう。なお、このレシピはサケをタイなど白身魚に代え、水分を減らしてアサリ、イカ、エビなど他の魚介類とハーブとしてサフランを加えてスープをもっと濃厚にすれば、地中海沿岸で食べられている魚のごった煮「ブイヤベース」となります。
血合の部分の下処理
マグロ類、ブリなどの血合肉を店頭で見かけることがあるので、ここではマグロ類の血合の下処理の方法をご紹介します。血合肉のニオイは身の中に含まれる血のニオイですから、血を除くことに全力を注ぎましょう。まず、1~2cm角に切った血合を氷水に漬け、軽く揉み洗いします。おそらく水が真っ赤に染まることと思いますので、水を替えましょう。その後数分放置するとまた水が赤く染まってくることと思います。これを数回繰り返したら水を切り、日本酒を振りかけて下処理はおしまいです。味が抜けてしまうのは仕方がありませんが、もともと旨味が濃厚に含まれる部分です。お値打ちな血合肉を簡単に食べやすくすることを重視してください。この血合は佃煮にしたり、レバーの代わりとして、味付けは濃い目に調理して頂いてください。 おすすめの調理は、竜田揚げ、照り焼き、佃煮です。お好みに応じて、ニンニク、ショウガ、山椒、ローズマリーなどハーブで香り付けをすると、ちょっと変わった味わいが楽しめますよ。
アラを食べるときには、小骨に気を付けてくださいね。骨がのどに刺さってしまったら、ご飯をかまずに飲み込むのは誤った対処法です。より骨を奥に突き刺してしまう可能性がありますから、速やかに医療機関に行きましょう。
(企画・資源利用研究課)