おさかな雑録
No.79 アサバホラアナゴ 2013年1月23日
本当は見えているんでしょう?
例によってまき網の選別箇所で見慣れない魚を発見。今回はひものような体をした魚です。この手の魚は現場で容易に判断できない種が含まれるため、持ち帰って調べることにしました。
アサバホラアナゴ 全長 30.6cm 南伊勢町贄浦産 平成25年1月17日撮影
研究室に持ち帰り、いつも通り標本と検索図鑑を照らし合わせていきます。
アサバホラアナゴ 青矢印は肛門、赤矢印は鰓孔を示す 全長 30.6cm 南伊勢町贄浦産 平成25年1月17日撮影
まず、肛門の位置がかなり前方、ほぼ胸鰭後縁の位置にあります。ひも型魚の代表ともいえるウナギ目には数多くの種が含まれますが、このような特徴をもつものはそうありません。また、左右の鰓孔は腹面に近い位置にありますが、やや離れています。
アサバホラアナゴ 青矢印は前上顎骨歯、赤矢印は鋤骨歯を示す 全長 30.6cm 南伊勢町贄浦産 平成25年1月17日撮影
次に、口をあけて口蓋にある歯をみると、前上顎骨に歯があり、鋤骨の歯は大きく1列です。これらの特徴によって、この標本はアサバホラアナゴであると同定されました。
アサバホラアナゴ頭部 側面(上) 背面(下) 青矢印は眼球の位置を示す
全長 30.6cm 南伊勢町贄浦産 平成25年1月17日撮影
ところで、本種には「目が退化的である」という特徴が検索表に記載されていますが、この標本を見たとき、目についての変わった印象はなく、退化しているとはとても思えませんでした。同定後に疑問に思いよくよく見ると、なんと目が皮下に埋没しているではありませんか!しかし、眼球はしっかりとしているように見えますし、皮膚は透明です。洞窟など、光の届かない場所に生息するような魚とはずいぶん趣が異なり、目が必要ないというよりは、目を保護しているようにも思えます。ともあれ、アサバホラアナゴはとても印象的な外見的特徴をもっていて、今後は現場で見かけても迷うことはなさそうです。
(2013年1月23日掲載 資源開発管理研究課)