おさかな雑録
No.75 ヒチビキ 2012年10月15日
「あかぼら」と呼ばれて
ハチビキは志摩地方では「ほて」と呼ばれ、大型魚は重要な漁業対象種となっています。一方、お隣南伊勢町のまき網の選別場所では、ハチビキ類をひとまとめに「あかぼら」と称し、選別をしている人たちは食用と認識していません。大型のハチビキはまき網では見かけないとはいえ、扱いの差はあまりに大きいと感じます。
上から、ロウソクチビキ 11.4cm、ハチビキ 10.6cm、ヒチビキ 10.4cm
大きさはいずれも標準体長 南伊勢町贄浦産 平成24年10月3日撮影
ただでさえ、赤い魚はよく目立ちます。まき網の選別場所でハダカイワシ類などと一緒にされているロウソクチビキ、ハチビキの2種には、いつも強く目を引きつけられ、ついつい手に取ってしまいます。今回も、何気なく2種だと思って拾ってきたのですが、研究室でよく見ると、なんともう1種混じっているではありませんか!せっかくの機会ですので、上から順に紹介します。
ロウソクチビキ 標準体長11.4cm 南伊勢町贄浦産 平成24年10月3日撮影
まず、一見して、ロウソクチビキは体が細長い魚です。ロウソクという名は、体が細長いことから来ていると思われます。ハチビキほど大きくはなりません。
ロウソクチビキ 標準体長11.4cm 南伊勢町贄浦産 平成24年10月3日撮影
また、第1、第2背鰭の間には鰭膜のない2~3本の棘があり、鰓腔後縁にはひとつの突起があります。上の写真では、それぞれの特徴を赤い矢印で示しています。
ハチビキ 標準体長10.6cm 南伊勢町贄浦産 平成24年10月3日撮影
次はハチビキ。まき網でよく目にするのは30cm程度までです。ロウソクチビキよりも体がやや側扁します。色はロウソクチビキに比べるとくすんでいるものの、サバ類やアジ類に混じっていると十分に華やかです。
ハチビキ 標準体長10.6cm 南伊勢町贄浦産 平成24年10月3日撮影
ハチビキの特徴は、大型になると尾柄に隆起線があることですが、写真の小型の魚では尾柄の特徴は不明瞭です。また、鰓腔後縁には2つの突起があることも大きな特徴です。第1、第2背鰭の間にある、鰭膜のない棘は1本程度です。
ヒチビキ 標準体長10.2cm 南伊勢町贄浦産 平成24年10月3日撮影
そして、隠れていたもう一種で今日の主役、ヒチビキです。体型はハチビキ、色はロウソクチビキといった外見です。現場では色のきれいなハチビキという認識で、別種とは思っていませんでした。なお、ヒチビキも大型にはならない種のようです。
ヒチビキ 標準体長10.2cm 南伊勢町贄浦産 平成24年10月3日撮影
ヒチビキはロウソクチビキに比べてやや側扁し、第1、第2背鰭の間にある、鰭膜のない棘は1本程度です(写真は2本あるように見えますが、左側は鰭膜が切れている状態)。また、鰓腔後縁にはひとつの突起があります。
簡単に上記3種の魚を見分けるには、体型と鰓蓋後縁を見れば見当が付きます。また、大型のハチビキは尾柄を見れば一目瞭然と思われます。大型のハチビキを入手したらまた紹介しますのでお楽しみに。
(2012年10月15日掲載 資源開発管理研究課)