おさかな雑録
No.72 ヒレジロマンザイウオ 2012年8月9日
子どもはかわいいんだけど
ヒレジロマンザイウオ 標準体長12㎝ 南伊勢町奈屋浦産 平成24年8月3日撮影
例によってまき網の選別場所で異彩を放つ魚を発見。一見してとても愛らしい姿をしています。シマガツオ科の魚だと思われましたが、どうやら幼魚は成魚とは異なる姿をしているようで、名前が思い当たりません。持ち帰って調べたところ、やはりシマガツオ科で、ヒレジロマンザイウオの幼魚と査定されました。
ヒレジロマンザイウオ 標準体長64㎝ 南伊勢町宿田曽産 平成23年12月15日撮影
成魚の姿はこのとおり、とても厳ついもので、幼魚の印象とはかなり異なります。ヒレジロマンザイウオの特徴は、両眼間隔(おでこ)が著しく突出し、頭部が側扁すること、左右の腹鰭が離れること、腹鰭起部は胸鰭基部上端より前方にあることです。また、尾鰭の後縁が白く縁どられることも特徴の一つと考えられます。
ヒレジロマンザイウオ 青線は胸鰭基部上端、赤線は腹鰭起部の位置を示す
標準体長64㎝ 南伊勢町宿田曽産 平成23年12月15日撮影
さて、幼魚を上記の特徴に着目して見比べると、頭部の形状を除きよく一致しています。一方、幼魚は成魚と比べて、両眼間隔(おでこ)が突出せず、胸鰭や腹鰭の色が黄色で、胸鰭、尾鰭が短く、背鰭、臀鰭が伸長するなどの違いがみられます。
ヒレジロマンザイウオ 標準体長12㎝ 南伊勢町奈屋浦産 平成24年8月3日撮影
そして、最上段の写真ではわかりませんが、尾びれの後縁は、明瞭に白く縁どられています(上の写真では白い矢印で図示)。一見すると別種のようにも見えるこれら2尾の魚ですが、このように種としての特徴はよく一致しており、同種と判断されました。
魚類に限らず、生き物は幼期に独特の姿をもつことがあり、どういうわけか知りませんが、幼期はかわいらしいことが多いように思われます。ともあれ、生き物を見分けるという作業には、これら成長による差というものを考慮する必要があります。幼魚はかわいくて目の保養にはなる一方、その分手間もかかるといったところでしょうか。
(2012年8月9日掲載 資源開発管理研究課)