おさかな雑録
No.70 テンジクダツ 2012年6月22日
妙なところに妙なものが
テンジクダツ 標準体長73cm 南伊勢町贄浦産 平成24年5月31日撮影
定置網の選別場所で捨てられている細長い魚を発見。遠くからでも良く目立つ、ダツの仲間です。さて、どんな種なのかなと近寄ってみると、どうも下顎の先になにかがついています。目の上のこぶではありませんが、とても気になりました。
テンジクダツ 頭部 標準体長66cm 南伊勢町贄浦産 平成24年5月31日撮影
同じ場所で同種と思われる魚をもう一つ見つけました。こちらは見慣れたすっきりとした口先をしています。が、よくみると口先は先端が折れていました。これら2尾のダツ類は、口先が折れている以外、特徴が良く一致しており、どちらもテンジクダツと思われました。
テンジクダツの特徴は、頬に横帯がないこと、尾柄部に隆起線があることです。
テンジクダツ 尾柄部 標準体長73cm 南伊勢町贄浦産 平成24年5月31日撮影
上の写真では、尾柄部の隆起線を赤い矢印で示しています。ダツの仲間にはいくつかの種類がありますが、この隆起線の有無は種を見分ける際に重要です。
テンジクダツ 下顎先端 標準体長73cm 南伊勢町贄浦産 平成24年5月31日撮影
さて、持ち帰ってもう一度詳しく調べましたが、やはりこの2尾はテンジクダツと同定されました。うち一尾の下顎先端にある突起は非常に硬く、骨がこういう形になっていると思われました。図鑑によると、テンジクダツの中にはそういう個体がいることはこれまでにも知られているようです。
ダツ類は高速で遊泳する魚なので、このような突起があると何か効果があるか、あるいはじゃまだと思われます。あってもなくてもかまわないような、どうでも良い形質とも思えません。
たまたま一部の個体だけが何らかの要因によって持つようになったのか、それとも本来の姿で、漁獲されるときに先端が折れることが多いだけなのか?そもそも、いったいなんの役に立つのか?そしてテンジクダツ以外のダツ類ではどうなのか?
なんてことはないはずの魚についていた下顎の突起ひとつで、頭の中に「?」が渦巻いた一日でした。
(2012年6月22日掲載 資源開発管理研究課)