おさかな雑録
No.59 カスザメ 2011年12月13日
エイのようなサメ
カスザメ 全長83cm 南伊勢町贄浦産 平成23年11月25日撮影
贄浦の大型定置網の選別場所に見慣れない魚を発見。エイやサメの類であることは明らかなのですが、いろいろ変わった特徴が見られます。 まず、サメにしては著しく縦扁した体を持っており、エイにしては鰭がきちんと独立しています。一言でいうならサメとエイのあいのこみたいな魚です。
カスザメ 全長83cm 南伊勢町贄浦産 平成23年11月25日撮影
カスザメ 頭部腹面(丸印は鰓孔) 全長83cm 南伊勢町贄浦産 平成23年11月25日撮影
腹側をみると、臀鰭はありません。また、口は前端に開き、鰓孔は一部腹面から見えるものの、体の側面に開いています。やはり、エイのような、サメのような魚です。
これだけの特徴があれば調べるのは簡単で、すぐにカスザメの類だとわかります。カスザメの仲間はカスザメ目に属し、世界でも、ひとつの目にひとつの科、ひとつの属しかありません。いかに変わった連中かというのがおわかりいただけるでしょうか。
日本ではカスザメ属にはカスザメとコロザメの2種が知られます。実は市場で一目見たとき、カスザメ属まではわかったのですが、カスザメかコロザメかの判断ができませんでした。
カスザメとコロザメは、以下の特徴により区別されます。胸鰭の側端の角度が90°から100°ならカスザメ、120°前後ならコロザメ。背中線に沿って棘があればカスザメ。左右の鼻鬚間の皮褶がよく凹み、背面からでも明瞭に見えればコロザメです。
カスザメ 胸鰭(左)、背面(右) 全長83cm 南伊勢町贄浦産 平成23年11月25日撮影
カスザメ 閉口(左)、開口(右) 全長83cm 南伊勢町贄浦産 平成23年11月25日撮影
カスザメ 頭部背面 全長83cm 南伊勢町贄浦産 平成23年11月25日撮影
この個体は、カスザメの特徴をすべて備えていることから、カスザメと同定されます。このカスザメ、一見すると体に目立った棘もなく、大きな恐ろしい口もないようで、とても優しげに見えますが、背中の棘はのこぎりのように鋭く、うかつにさわればけがをします。また、体の前端に開く口は思いの外大きく、いかにもサメという鋭い歯ももっています。もし生きていたら、近寄りがたい魚だと感じました。
ところで最後に問題です。この魚の目はどこにあるでしょう?上の写真で目を探してみてください。
答えは下の写真です。
カスザメ 頭部拡大(矢印は目) 全長83cm 南伊勢町贄浦産 平成23年11月25日撮影
(2011年12月13日掲載 資源開発管理研究課)