おさかな雑録
No.58 カワウ 2011年11月17日
増えすぎて困ることも
川にいるのはカワウで,海にいるのがウミウ? 実は大間違いです。今回は両種の違いではなくカワウにまつわる話です。カワウは1971年には全国で3,000羽以下,コロニー(繁殖地)は全国で3ヶ所,まさに絶滅寸前となりました。その理由は,採食環境や生息環境の悪化や有害化学物質の影響によると推定されています。しかし1990年代以降に個体数と分布域は加速的に増え,県内だけでコロニーは20ヶ所以上,近年は9,000羽以上計数されたこともあります。そのコロニーの多くは海岸近くにあります(沿岸コロニー)。そのため三重のカワウは,主に伊勢湾や熊野灘の魚を採食していると考えられます。
巣材を運ぶカワウ 石垣池(鈴鹿市)平成20年3月2日撮影:古川未来
急速に増えたカワウ。苦情が聞こえてきます。
・漁業関係者・・・「放流した魚(特にアユ)が食べられてしまい,大変困る。」
・コロニー・ねぐら近くの市民や県市町関係者・・・「フンや鳥の臭いがひどく,窓を開けられない」,「樹木が枯れ,景観が悪化する(植生の変化)」,「止水域の水質が悪化する(富栄養化)」。
簡単そうな防除。実は容易じゃありません。
・動物愛護。
・猟銃を扱う猟友会の高齢化や使用できる地域の制限,などなど。
殺処分には強い抵抗感がある方もいますし,その気持ちも分かります。また,処分されたカワウは有効利用がないため,猟友会などにも大きなメリットがありません。
フンで白くなった河畔林 雲出古川(津市)平成22年11月3日撮影
鈴鹿水産研究室が県内の主要な河川漁場への飛来状況を調べたところ,飛来数がとても多い河川とそうでない河川がありました。また秋や冬に飛来数が増える傾向がありました。多くの制限の中で効率よく防除するには,基礎的なデータが必要です。
アユを放流するから(アユばかりの川にしちゃう(?)から),問題になるいう意見もあります。でも前述のとおり,アユばかり食べている訳ではありません。全国的に急増し,漁業関係者以外にも問題を引き起こしているのが,事実です。
群れるカワウ 櫛田川(松阪市) 平成22年8月10日撮影
最近の調査では,滋賀県や愛知県のコロニーから三重県に飛来することも確認されています。このことは,ある地域での追い払いが他所への拡散にも繋がりかねなということです。県では水産と自然環境の担当者が広域協議会に参加して,関係府県と情報を交換をしています。なお,カワウに対しては,コロニー・ねぐらの数やその面積,,個体数を管理する『個体数管理』が最適だとされています。
(2011年11月17日掲載 鈴鹿水産研究室)