おさかな雑録
No.55 ヤマトカマス 2011年9月28日
加工向きのカマス
ヤマトカマス 標準体長17cm 南伊勢町贄浦産 平成23年9月7日撮影
カマス類は細長い体と鋭い歯をもつ魚で、三重県沿岸ではアカカマスとヤマトカマスが主に漁獲されています。地元ではアカカマスのことをアラハダと呼ぶことがあり、ヤマトカマスはクロカマスと呼ぶことがあります。一方、どちらも単にカマスと呼ばれることもあります。アカカマスは沿岸性が強く、春から初夏に卵を産みます。幼魚は沿岸で育ち、夏に定置網に姿を見せます。ヤマトカマスはどうやら沖合いに生活の中心があるようで、初夏に幼魚が定置網に現れ、秋にかけて成長しつつ漁獲されますが、周年見られるものではありません。
アカカマス 標準体長36cm 南伊勢町贄浦産 平成23年9月7日撮影
アカカマスとヤマトカマスの区別は、慣れれば難しくはありません。アラハダとは粗肌のことで、鱗が大きくみえるのはアカカマスです。もし判断に迷ったら、第1背鰭と腹鰭の位置関係を見れば簡単で、ほぼ同じならヤマトカマス、腹びれが前に来るのはアカカマスです。
ヤマトカマス(左)、アカカマス(右) 矢印は第1背鰭と腹鰭の始点 南伊勢町贄浦産
平成23年9月7日撮影
ちょうど今ごろは、アカカマスは量が少なく、幼魚と大型魚の極端な体長組成となっています。一方ヤマトカマスは商品サイズとして適当な大きさのものがまとまって漁獲されますので、今はヤマトカマスの季節といえます。
カマス類はやわらかく淡白な白身で、ヤマトカマスはアカカマスに比べやや水っぽく、脂ののりも劣るようです。こう書くとヤマトカマスには魅力がないように思われるかもしれませんが、干物にすることで味が濃くなり、脂が少ないことで味の劣化が起こりにくくなるため、弱みが強みに変わります。また、紀州のサンマ同様、お寿司にも向いています。海の恵みを上手に利用する知恵は、本当にすばらしいと思います。
カマス類の漁獲は南伊勢町贄浦と紀北町島勝浦で多く、島勝浦ではカマス祭りを開催するなど、特に重要な魚種として大切に利用されています。
(2011年9月28日掲載 資源開発管理研究課)