おさかな雑録
No.53 ヒレナガカンパチ 2011年8月22日
尾鰭の下側先端に注目
ヒレナガカンパチ 標準体長26cm 南伊勢町贄浦産 平成23年7月25日撮影
まき網の漁獲物にヒレナガカンパチの幼魚が1匹混じっていました。まき網にカンパチが入ること自体珍しくて目にとまったのですが、よく見るとカンパチではなく、ヒレナガカンパチで、これはちょっと珍しいと思われましたので紹介します。
カンパチ 標準体長25cm 志摩市波切産 平成22年9月30日撮影
こちらがカンパチで、毎回のように市場で見かけます。カンパチという名は、この魚が泳いでいるのを上から見ると、頭部にちょうど漢字の八の字のような模様があることに由来しています。この八の字模様はカンパチもヒレナガカンパチも共通です。
さて、ヒレナガカンパチは、カンパチと並べてみれば第2背鰭や臀鰭の前部がやや長いように見えます。ヒレナガという名の由来ですが、この特徴は相対的なもので、特に両種を比較できない状況だと判断に迷うことがあります。
そこで筆者も頼りにしているのが尾鰭の下側(学術用語としては下葉と呼びます)の先端で、白く抜けていればカンパチ、そうでなければヒレナガカンパチです。
カンパチ(左)とヒレナガカンパチ(右) 矢印は尾鰭下葉先端の白色域を示す
上の写真、ちょっと微妙に見えますが、実物では写真より確実に区別できます。
三重県の沿岸域ではカンパチの幼魚は「しお」と呼ばれ、なじみの深い魚ですが、ヒレナガカンパチについては実際に少ないのか、単に区別されないためか、水揚げのデータはほとんどありません。筆者も、熊野灘沖の浮魚礁では確認していますが、市場に水揚げされたものは見たことがありませんでした。これら2種はお互いよく似ていて、分布域もよく重なるのですが、カンパチの方が岸よりに勢力を伸ばしているように思われます。
(2011年8月22日掲載 資源開発管理研究課)