おさかな雑録
No.41 ウシエビ 2011年3月9日
車や熊でなく牛でした
漁業者に協力いただき集めた稚エビの冷凍サンプルの中から,真っ黒なエビが出てきました。『ウシエビ』の稚エビです。
ウシエビ 2010年11月3日採集(冷凍保存)
別名ブラックタイガーと呼ばれ,輸入品で有名です。熱帯・亜熱帯にも生息する南方系のクルマエビ類で,日本では房総半島以南に生息しています。 伊勢湾では主に底曳き網で漁獲され,同じ仲間ではクルマエビ,次いでクマエビ,最も少ないのがウシエビという感じです。
ウシエビの頭部(額角の先端に折れあり) 2010年11月3日採集(冷凍保存後,エタノール保存)
このエビはクルマエビ属で,他のクルマエビ科(例えばヨシエビ属のヨシエビ)と違い,額角の下縁(下側)に歯(棘)があるのが特徴です。 要するに目と目の間にある角の下側にもトゲがあるってことですね。
では,クルマエビ・クマエビ・ウシエビ,どこが違うのでしょうか? 標本になってしまうと,体色が激変するので,識別が難しくなります。 生殖器の形でも分類は可能ですが,背面から見た頭胸甲(とうきょうこう)の形のほうが容易です。 これなら頭付きの料理でも識別できそうです。
ウシエビの雌性生殖器 2010年11月3日採集(冷凍保存,エタノール解凍中)
下の写真はウシエビとクルマエビの頭胸甲です。ウシエビはクルマエビと違い,額角から伸びる隆起(額角後隆起)中央にある溝(正中溝)が無く,さらに隆起の両側に沿って伸びる額角側溝が短い(破線のある場所まで)です。
ウシエビ(左)・クルマエビ(右)の頭胸甲の違い(冷凍保存後,エタノール保存)
ウシエビ(ブラックタイガー)の国内流通のほとんどが東南アジアの養殖ものです(最近は病気に強いバナメイエビの養殖が主流になりました)。 それに漁獲量が多くないため,伊勢湾産の天然ウシエビを食せる機会は滅多にありません。前浜もの,三重県産のウシエビを食べることができれば,一生自慢できます,きっと。
(2011年3月9日掲載 鈴鹿水産研究室)