おさかな雑録
伊勢湾で海のスプリンターがとれました
鈴鹿市漁協から「カジキが獲れたので,種名を教えてよ。」って電話がかありました。“稚魚でも獲れたのかな?”と思いつつ,図鑑を片手に目の前の港へ急ぎました。
!!
ふだん,獲れない魚だけど,その大きさにビックリです。旧河芸町(現・津市)沖のバッチ網漁で混獲されたとのことです。
鈴鹿水産研究室のある白子で獲れる大モノといえば,80cm程度のスズキでしょうか。魚を見慣れた関係者も大興奮です。水揚げ作業を邪魔しないように,特徴(①腹ビレがある,②胸ビレが固定され動かない)を見極め,「シロカジキ」と名前が分かりました。測定してみたところ,全長は3.89mありました。伊勢湾に入り込んだのは,餌を追いかけてなのか?それとも単に迷ったのでしょうか?
シロカジキ 鈴鹿市白子産
平成22年10月18日撮影
シロカジキ 鈴鹿市白子産 平成22年10月18日撮影
三重県でも熊野灘に面した港ではカジキ類が水揚げされることがあります。するどく伸びた吻(上顎)は危ないため,船上で切り落とされることが多く,セリでは丸太のような状態で扱われることがほとんどです。
さすがの白子の漁師さんらもそのような扱いを知らないので,鋭い吻がついた状態を観察することができました。
シロカジキ 鈴鹿市白子産 平成22年10月18日撮影
カジキ類は水中を最も早く泳ぐことができる動物と言われています。尾柄部(尻尾の付け根)には,尾柄隆起(小さな翼のような突起,2・3枚目の写真)があり,高速遊泳を安定させるためのスタビライザーの役目をしているようです。
迷い魚かもしれませんが,海のスプリンターが伊勢湾にいました。伊勢湾の生き物の多様性を,改めて感じた日になりました。
(2010年10月19日掲載 鈴鹿水産研究室)