おさかな雑録
No.21 ナメハダカ 2010年5月26日
この魚、食べられるのか
ナメハダカ 標準体長183ミリメートル 南伊勢町贄浦産 平成22年5月7日撮影
5月7日の早朝、まき網の漁獲物を選別後の、小サバやイワシ類などがごちゃ混ぜになった箱の中で見慣れない魚を見つけました。漁業者の方にお願いしてもらい受け、研究所に持ち帰って調べたところ、ナメハダカという標準和名の魚であることがわかりました。
ナメハダカ 頭部拡大 平成22年5月7日撮影
ナメハダカはハダカエソ科に属し、目の直前に小乳頭状突起がないこと、臀鰭が29~32軟条であること、背鰭が腹鰭より後方にあることが特徴とされています。
ナメハダカ 頭胸部腹面 平成22年5月7日撮影
また、要解剖とされていますが、腹中線の発光器は1本であることも特徴のひとつです。この個体は鮮度が良いためか、解剖しなくても1本であることが分かります。
ナメハダカは水深200m~615mのやや深いところにすむ魚で、通常は私たちの目に触れる機会はほとんどありません。漁業者によるとそう珍しい魚ではないとのことでしたが、筆者は一年間ほぼ毎週通い続けてはじめて見ました。ところでいわゆる深海魚の類は網にすれてボロボロになることが多いのですが、ナメハダカは薄く細長く滑らかな体をもつせいか比較的きれいなまま水揚げされます。ナメハダカは食用として利用されていませんが、透明感のある美しい白身はとても魅力的で、もし骨ごと食べられるようなら身は薄くとも十分通用しそうです。なぜこんなことを書くのかというと、変わった魚をもらうとき、いつも漁業者の人に「この魚、食べられるのか?」と聞かれるからです。今回は標本になりましたが、次回はぜひ食用として試してみたいと考えています。
(2010年5月26日掲載 資源開発管理研究課)