おさかな雑録
No.104 ワモンダコ 2017年1月30日
もちろん食べられます
ワモンダコ 全長85㎝ 南伊勢町奈屋浦産 大高屋商店提供 平成29年1月25日撮影
奈屋浦の市場で仲買人の方たちに「変なタコがいるから見てくれ」と声をかけられ、活魚水槽に浮かぶ容器を空けると、確かに見慣れない模様のタコが入っていました。肌はマダコに良く似ていて、大きさもマダコくらいですが、体は白っぽい地に不規則な網目状の褐色斑、腕は褐色地に白斑があり、腕の付け根に明瞭な眼状斑もあるため、印象はマダコとはかなり異なります。しかし相手はタコ。模様などいくらでも変化させることができる疑いもあります。持ち上げると腕の間にある膜がちょっと広いようにも思いましたが、比較するためのマダコはあいにく水揚げがありませんでした。「毒はないのか?食べられるのか?」と聞かれ、「ワモンダコ」という名前が一瞬よぎったもののまったく自信がありません。「ヒョウモンダコではないと思う。食べられないことはないと思う。」とかわすのが精いっぱいでした。
それで、仲買人に競り落とした個体を寄贈していただき、名前を調べるために持ち帰ったところ、図鑑を開ければすぐに「ワモンダコ」と判明しました。特徴はやはり上記の模様で、サンゴ礁に生息し、沖縄では普通に食用にされていること、図鑑では四国以南に分布すると書いてありますが、神奈川でも採集例があることがわかりました。
ワモンダコ 全長85㎝ 南伊勢町奈屋浦産 大高屋商店提供 平成29年1月25日撮影
ワモンダコの特徴である体の模様ですが、やはりタコだけに変幻自在で、白っぽい容器に入れておくとみるみる消えていきます。
ワモンダコ 全長85㎝ 南伊勢町奈屋浦産 大高屋商店提供 平成29年1月25日撮影
こうなると、特徴である体の模様はほとんど判別できず、かろうじて腕の先端の白色斑が残るのみです。さすがにタコは変身の名人で、もしこの状態だったらマダコと思ってしまいそうです。
市場での話から、ワモンダコは初めて見たわけではなく、これまでも見られていたが気持ち悪くて売り物にはなっていなかったとのこと。「名前のわからんものは売れん」とも。ワモンダコはもちろんマダコとは異なる種ですが、れっきとした食用種ですから、これからは堂々と「ワモンダコ」として販売していただければと思います。試料を提供していただいた大高屋商店さま、どうもありがとうございました。
(2017年1月30日掲載 企画・資源利用研究課)
参考文献