マハタのウイルス性神経壊死症に対するワクチンの有効性
田中真二(三重水技)・森 広一郎・有元 操(日栽協)
岩本季典・中井敏博(広大生物生産)
【目的】マハタの夏季の大量死(いわゆる転覆病)の1原因と考えられているウイルス性神経壊死症の防除対策として,予防免疫に関する基礎的検討を行った。
【方法】1.マハタ病魚由来ノダウイルス(SGMie95株)をマハタ(平均体重90g)に接種し,生残魚から血清を採取した。この血清とウイルス液とを等量混合して25℃で2時間,4℃で1晩静置したものをキジハタ人工種苗(8.8g)に筋肉内接種した。対照区には上記マハタと同群の非感染魚の血清を用いた。これらの魚を27℃で10日間飼育して死亡状況を観察した。2.大腸菌による発現系を用いて作製したSGMie95株外皮タンパク質をワクチンとし,2回の感染実験を行った。マハタ人工種苗(30g)にワクチンを筋肉内接種(タンパク量60μg/尾)し,10日後に追加接種を行った(水温25℃)。対照区には大腸菌由来タンパク質を筋肉内接種した。2回目のワクチン接種から10日後に,3段階の濃度に調製したSGMie95株ウイルス液を筋肉内接種し,28℃で14日間死亡状況を観察した。
【結果】1.感染耐過魚の血清で処理したウイルスを接種した区の死亡率は15%となり,対照区の55%に比べて有意に低かった(p<0.01)ことから,感染耐過魚の血清にはノダウイルスに対する中和作用のあることが示された。2.2回の感染実験の死亡率はワクチン区で10~65%,対照区で65~100%となり,いずれの濃度のウイルス液接種群でもワクチン区の死亡率は対照区より有意に低かった(p<0.01)。特に最低濃度のウイルス液接種群では,有効率(RPS)が88%および69%と高いワクチン効果が得られた。