第6回イセエビ類の生態と資源管理に関する国際会議
三重県科学技術振興センター水産技術センター生物資源グループ主任研究員 松田浩一 がアメリカ合衆国フロリダ州キーウェストで開催されたイセエビ類の研究についての国際会議に参加しましたので,その概要について報告します。 |
会議名称 | Sixth International Conference and Workshop on Lobster Biology and Management 「第6回イセエビ類の生態と資源管理に関する国際会議」 |
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開催日時 | 平成12年9月11日(月)~15日(金) |
開催場所 | アメリカ合衆国フロリダ州キーウェスト カーサ・マリーナ・リゾートホテル |
参加者数 | 204名 |
参加国数 | アメリカ・イギリス・オーストラリア・ニュージーランド・メキシコ・キューバ・ブラジル・日本等25カ国 |
内容
世界中からイセエビの生理・生態や資源管理等の研究者が参集し,日ごろの研究成果を発表するとともに,最新の研究情報を交換し,研究レベルの向上を図ることがこの会議の目的です。当会議は4年に1度開催されており(第1回カナダ,第2回オーストラリア,第3回キューバ,第4回日本,第5回ニュージーランド),いわばイセエビ研究者にとってのオリンピックというものです。 | 会場となったホテル |
日本からの参加者(中央はアメリカのイセエビ研究の権威ヘンルンカインド・フロリダ州立大教授夫妻,左端が松田) |
今回の会議への日本からの参加は,三重県の松田,三重大学2名,東京理科大学1名の4名と少なく寂しい気がしました。三重県の松田は,「人工生産されたイセエビのプエルルス幼生(稚エビになる前の幼生期)の期間と色素発達に対する水温の影響」について口頭発表しました。 内容は,卵からふ化したフィロゾーマ幼生を飼育して得たプエルルス幼生を9つの水温で飼育し,プエルルス幼生期の期間,及び色素の発達過程がどのように変化するのかを調査した結果,16℃ではプエルルス幼生期は約40日であり,水温が高くなるにしたがってその期間は短くなり,28℃では約11日であった。また,色素の発達も水温が高くなるほど速くなった,というものです。 |
天然においてフィロゾーマ幼生から変態直後のプエルルス幼生を採集することは困難であり,プエルルス幼生期全般を通じた調査を行うには,人工生産したプエルルス幼生を用いることが必要です。しかし,プエルルス幼生の人工生産は困難であり,安定して生産できるのは世界中で三重県科学技術振興センターと他の 1,2の機関しかありません。したがって,今回の研究成果は貴重なものであり,いまだ不明な部分が多いイセエビの幼生期の自然における生態を知る上で重要な知見になると考えています。
会議への参加の目的は,研究成果を発表するとともに,他国の研究者との交流によりイセエビ幼生の飼育技術に関する研究の情報情報を収集することにあります。この点では,イセエビ幼生飼育研究を行っているオーストラリア,ニュージーランドの研究者と交流できたことは大きな収穫でした。また,今後幼生飼育研究を実施することを考えているキューバ,ブラジル等の研究者からは,幼生飼育技術について多くの質問を受けました。
次回の開催はオーストラリアで予定されています。
この会議に関する質問等ありましたら,いつでもどうぞ。