日本におけるイセエビPanulirus japonicusの漁業管理
日韓GLOBECシンポジウム講演要旨(2000年8月23日~8月25日;於 釜山市)
Fisheries Management of the Spiny Lobster Panulirus japonicus in Japan.
山 川 卓 (三重県科学技術振興センター水産技術センター)
日本に分布するイセエビ類のうち、イセエビPanulirus japonicus が最も広範かつ豊富に分布する。
イセエビは高価であり定着性が強いため、古くから漁業者による自主的な管理が地先ごとになされてきた。具体的な管理方策は、禁漁区や禁漁期間の設定、漁獲制限サイズの設定、漁具の制限(網の種類、目合い、糸の材質と太さ、網数)、月夜休みの設定、輪採制の採用、抱卵雌や小型個体の再放流など、多様である。
近年では、科学的な管理モデルに基づいてこれらの管理方策の有効性に検討が加えられており、その結果、最適な管理方策と現実の管理との間の乖離なども指摘されるようになった。
市場価格や漁具能率の漁期内変化、操業経費などを考慮に入れながら漁獲努力の漁期内最適配分を最大原理で行う管理モデルが提示されている。産卵資源量の経済価値を考慮したうえで加入資源の有効利用と再生産管理を同時にめざす最適漁獲モデルも提案されている。
漁業者の自主的管理にもとづく伝統的な管理手法についても、その有効性と作用機序について明らかにするため、より詳細な科学的検討が加えられるべきであろう。