三重県における人工衛星NOAA海面水温画像のインターネット上からの提供
日韓GLOBECシンポジウム講演要旨(2000年8月23日~8月25日;於 釜山市)
Presentation of SST images from satellite NOAA on the internet by the Fisheries Research Institute of Mie, Japan.
久野正博・山川 卓 (三重県科学技術振興センター水産技術センター)
三重県科学技術振興センター水産技術センターは日本の太平洋沿岸中央部に位置する三重県によって運営される地方研究機関である。水産技術センターでは1996年6月から,人工衛星NOAAによるHRPT信号を直接受信し,日々の業務として海面水温の解析と情報提供を行っている。
水産技術センターでは従来から"人工衛星海況速報"(毎日発行)をFaxにより提供してきた。この情報は人工衛星NOAAの(合成)画像をもとに1℃間隔で等温線処理し,黒潮流路や暖水波及を手で書き加えた図を基本とし,黒潮流路や熊野灘海域の特徴,短期予報等についても簡単な文章で記述している。
この情報は1997年3月からは三重県ファックスサービスシステム(059-224-2888, ボックス番号3801)へ提供開始され,漁業者のみならず広く一般からのアクセスも可能となった。このサービスの利用者数は,1999年度は15,753件に達した。利用者数には季節的な変動が見られ、特に4,5月には年間を通して最高となる。これは、春季のカツオ漁の時期に対応しており、カツオ漁業に従事する漁業者が漁場選択にこの情報を積極的に活用していることがうかがわれる。
Faxサービスは大いに利用され好評であったが,利用者からは詳細なカラー画像の提供を望む声も大きかった。そこで,漁海況関係情報をホームページで公開できるように整備し,カラーでの人工衛星情報の提供を1999年5月10日から開始した。アドレスは、http://www.pref.mie.jp/SUIGI/kaikyo/movie/movieEng.htmである。掲載している衛星画像は九州南方から房総沖までをカバーする画像で,1日合成画像である。
利用者は早送りや巻き戻し機能のついた動画検索画面のサムネイル画像で雲量などの概略を判断した上で,必要とする日付の大画面の画像を表示することができる。そしてそれをさらに,各自の必要とする海域について画面上で自由に拡大,縮小したり、画像のドラッグにより表示位置の移動を行うことが可能である。バックナンバーの検索は1996年6月までさかのぼって行うことができ、画像データベースとしての利用が可能である。
日々変化するカツオ曳縄漁場の位置を漁業者の報告によって調査し,人工衛星による海面水温画像と比較検討することによって,カツオの漁場形成と海況条件の関係について考察した。その結果,熊野灘海域における春季のカツオ曳縄漁場は,黒潮小蛇行の通過などによって短期的に変化するが,黒潮縁辺部(前線域)および黒潮内側反流域の水温19~21℃前後の比較的限られた水温範囲に形成されやすいことが明らかになった。漁場形成海域は海面水温の分布図からある程度判断することができるため,人工衛星による海面水温画像はカツオ漁場の探索に有効であることが裏付けられた。