平成18年12月28日
イカナゴ情報(号外)
三重県科学技術振興センター
水産研究部 鈴鹿水産研究室
イカナゴの産卵期を迎えて,本年6月以降イカナゴの主夏眠場である出山において実施した,夏眠魚の採集調査状況を中心にまとめた結果を報告します。
1.親魚の量
平成18年(2006年)6月以降の夏眠魚調査では過去最高の水準で夏眠魚が採集されています(図1)。平成18年(2006年)3月9日の解禁当初に加入してきたイカナゴの尾数は651億尾と推定され、平成4年(1992年)の1,028億尾に次ぐ高水準であったと見られます。これは産卵開始期(1月)に入る前の12月頃からの急激な冷え込みと水温の低下によって、本来冷水性(北方性)のイカナゴにとっては産卵に好適な環境となったのだと考えられます。漁期を通じての漁獲尾数は三重県189億尾、愛知県261億尾の合計450億尾で、残った尾数は約201億尾と推定され、次漁期(平成19年・2007年)に向け多くの産卵親魚が残ったと考えられます(図2)
図1 出山におけるイカナゴ夏眠魚採集数の推移
図2 産卵時の親魚量
2.親魚の年齢構成
親魚の栄養状態は夏眠開始期(夏季)までに決定され、その後の産卵量に大きく影響します。図3に平成14年(2002年)~平成18年(2006年)における夏眠魚の体長組成を示しました。この図から,今年の夏眠魚のほとんど(87.8%)は体長6.5~10cmの0歳魚(2006年生まれ、年明けて1歳魚)が占めています。今産卵期はこの0歳魚が産卵親魚の主体となります。
図3 夏眠魚の体長組成
3.親魚の栄養状態
図4に夏眠開始期のイカナゴの肥満度組成を示しました。この肥満度とは体重を体長の3乗で割った数値で,魚の太り具合を示す指標です。今期の夏眠魚は,1992年以降で最も肥満度が低かった前年ほどではないものの、痩せた個体が多いようです。今までの研究で、伊勢湾のイカナゴは夏眠開始までに肥満度が4.2以上確保できないと成熟できず、産卵しないことが分かっています。これによると今期の親魚は38.4%(全体の4割弱)しか成熟しないと推定されます。図中では肥満度4.2以上の縦線よりも右側は成熟しますが、左側は成熟できず産卵はしないと考えられます。
図4 夏眠開始期の肥満度組成
4.推定される今期の産卵量
以上に述べた親魚の量、年齢組成、栄養状態をもとに、鈴鹿水産研究室で試算した今期の総産卵量は約13.4兆粒となります(図5)。これは近年としては比較的高い水準となります。
図5 推定産卵量
5.まとめ
推定される平成19年(2007年)の産卵量は、親魚量が多いため、近年としては高水準になると見込まれます。しかし,イカナゴ親魚が多いとふ化した仔魚を共食いによって減少させ、漁獲加入尾数の減少に繋がる可能性も報告されているため,現段階では次漁期のイカナゴ新仔漁がどうなるかは不明です。今後の仔魚の発生動向等に注意を払う必要があると考えられます。
例年通り,愛知県水試と共同でイカナゴ仔魚分布調査を行います。三重県の調査は1月15日の週に予定しています。情報が入りしだい,この後のイカナゴ情報でお知らせします。