平成16年12月28日
イカナゴ情報(号外)
三重県科学技術振興センター
水産研究部 鈴鹿水産研究室
イカナゴの産卵期を迎えました。例年どおり,6月から12月までの間,イカナゴの主夏眠場である出山において,夏眠魚の採集調査を行いました。夏眠魚の動向から予想される今産卵期の特徴をまとめたので報告します。
1.親魚の量
昨年・刳冝i2004年漁期)は、高水準の加入があり豊漁となりました。漁期末においても大量のイカナゴが残り、十分な産卵親魚が残せました。6月以降の夏眠魚調査においても、きわめて高い水準で夏眠魚が採集されました(図1)。鈴鹿水産研究室、津農林水産商工部が収集したデータをもとに、今産卵期の総親魚量を試算したところ、約80億尾と推定されました(図2)。これは、昨年の約2倍にあたり、近年では非常に高い水準です。
図1 出山におけるイカナゴ夏眠魚採集数の推移
図2 産卵時の親魚量(2004年は暫定値)
2.親魚の年齢構成
親魚の栄養状態は仮眠開始期(夏季)までに決定され、その後の産卵量に大きく影響します。図3に2004年における夏眠魚の体長組成を示しました。この図から,今年の夏眠魚のほとんど(約95%)は体長7~9cmの0歳魚(2004年生まれ、年明けて1歳魚)が占めていることが分かります。今産卵期はこの0歳魚が産卵親魚の主体となります。
図3 夏眠魚の体長組成
3.親魚の栄養状態
図4に夏眠開始期のイカナゴの肥満度組成を示しました。今期の夏眠魚は近年では肥満度の高い個体が多かったようです。我々の研究で、伊勢湾のイカナゴは夏眠開始までに肥満度が4.2以上確保できないと、成熟できないことが分かっています。これによると今期の親魚は6割以上が成熟し産卵すると推定されます。
図4 夏眠開始期の肥満度組成
4.推定される今期の産卵量
以上に述べた親魚の量、年齢組成、栄養状態をもとに、鈴鹿水産研究室で試算した今期の総産卵量は約11兆粒でした(図5)。昨年に比べ親魚の大きさは小さいものの、量が多く、高い水準の産卵が期待できます。
図5 推定産卵量
5.まとめ
推定される今期の産卵量は,近年では比較的高い水準にあります。
イカナゴ親魚の成熟は水温の降下と強く関係しています。しかし、今年の11~12月の伊勢湾海域の水温は観測史上最高水準で推移していました。12月14日に当研究室が行った観測(夏眠魚調査)でも,出山周辺の底層水温はまだ17.1℃あり,イカナゴ親魚の成熟・産卵の遅れが懸念されます。12月14日に採集された親魚では成熟が進み出してはいますが、成熟状況は前年同期に比べ未熟で、今後成熟を促進させるためには、さらに水温が低下する必要があると考えられました。このことにより、今期の産卵は近年ではかなり遅く、年内中の産卵は少なく、産卵は年明け以降本格化すると予想されます。
例年通り,愛知県水試と共同で,年明けから本格的な仔魚分布調査を行います(1回目は愛知水試が実施)。情報が入りしだい,イカナゴ情報でお知らせします。