マダイイリドウイルス病に対する低密度飼育の有効性
平成15年度 日本魚病学会大会 (2003年10月)
田中真二・井上美佐
目的
養殖マダイにおけるマダイイリドウイルス病(RSIVD)に対する低密度飼育の有効性を確認するとともに,飼育密度が血漿化学成分に及ぼす影響を調べる。
方法
人為感染試験:同一サイズの水槽に異なる尾数のマダイ(体重4g)を収容(15,30,60尾/100L),または同一尾数のマダイを収容した100L水槽に仕切を入れて遊泳空間の大きさを変える(15尾/25,50,100L)ことにより異なる収容密度を設定し,38日間飼育後にマダイイリドウイルスを浸漬感染(100.8,101.3TCID50/mL)させ,死亡率を比較した。血漿化学成分の測定:人為感染試験と同様に,水槽の収容尾数または遊泳空間の大きさを変えることにより異なる収容密度を設定し,21gのマダイを55日間飼育後に血漿化学成分を測定した。野外飼育試験:6gのマダイを3面の2m角網生簀に400尾,1,200尾および4,500尾収容して110日間飼育し,RSIVDの自然発病による死亡率を比較した。また,飼育開始から3週間後および6~8週間後に血漿化学成分を測定した。
結果
人為感染試験では,低密度区(15尾/100L)の死亡率が最も低く(20%,27%),これより収容尾数の多い区および遊泳空間の狭い区の死亡率は42~93%と高かった。野外飼育試験での死亡率は400尾区が9.3%,1,200尾区が32.0%,4,500尾区が47.4%であり,飼育密度が低いほど死亡率は低かった。血漿化学成分の測定では,水槽での飼育試験,野外飼育試験のいずれにおいても高密度区でHb濃度および血漿脂質成分(総コレステロール,リン脂質,トリグリセリド)が低い傾向が認められた。以上の結果から,RSIVDに対する低密度飼育の有効性が示されるとともに,飼育密度は血漿化学成分に影響を及ぼすことが確認された。