シマイセエビ幼生の完全飼育
平成14年度日本水産学会春季大会講演要旨(2002年4月1日~5日)
松田浩一・竹内泰介(三重科技セ水)
目的
シマイセエビは太平洋,インド洋の熱帯・亜熱帯域に生息し,この海域では重要な漁獲対象種となっているが,幼生期の生活史に関する知見は少ない。今回,抱卵したシマイセエビからふ化したフィロゾーマ幼生の飼育を試み,稚エビまでの飼育に成功したので,飼育条件下でのシマイセエビ幼生の成長について報告する。
方法
2000年9月5日に鹿児島県奄美大島沖で採捕された抱卵中のシマイセエビを三重県科学技術振興センター水産研究部(三重県浜島町)へ輸送し,自然水温で飼育した。飼育した親エビから9月19日にフィロゾーマ幼生がふ化し,ふ化した幼生の中から10個体を飼育に供した。飼育は,10個の飼育容器に1個体づつ収容して止水方式で行った。飼育容器には,日令130までは容量120mlのガラスカップ,以後は400mlのガラスカップを用いた。餌料としてアルテミアとムラサキイガイ生殖腺を用い,水温は日令110までは26℃,以後は24℃とした。飼育水と餌料は毎朝新しいものと交換した。飼育期間中,各個体において脱皮毎に体長を測定するととともに,脱皮間隔を記録した。
結果
ふ化幼生の平均体長は1.8mm(N=10)であり,10令幼生で10.3mm(N=8),20令幼生で22.1mm(N=3)となった。脱皮間隔は,1令で平均8.8日(N=10)であったが次第に長くなり,15令で15.2日(N=6)となった。その後の脱皮間隔は約15日で安定した。飼育した10個体のうち,2個体がプエルルス幼生へ変態し,このうち1個体は稚エビとなった。変態した2個体のフィロゾーマ幼生の期間は256日と294日,最終令フィロゾーマ幼生の体長は30.8mmと32.0mm,フィロゾーマ幼生期の脱皮回数はともに23であった。プエルルス幼生の体長は20.3mmと20.8mmであった。