イセエビのプエルルス幼生の期間と色素の発達及ぼす水温の影響
marine and Freshwater Research(2001年52巻1451-1457)
松田浩一・竹内泰介・山川卓(三重科技水)
内容
飼育したフィロゾーマ幼生から変態した55個体のプエルルス幼生の期間と色素の発達に及ぼす水温の影響を調査した。プエルルス幼生へ変態した翌日から稚エビへの脱皮まで16℃から28℃の間の9水温で飼育し,各水温での期間と色素発達の様子について観察したところ,期間と色素の発達は水温によって大きく影響を受け,水温がが高いほど期間は短く,色素発達は速くなった。水温とプエルルス幼生の期間は,D=a(T―α)b,(D:期間,T:水温,a,b,α:定数)で示され,16℃,20℃,24℃,28℃におけるプエルルス幼生の期間は,それぞれ40.0日,24.1日,16.3日,11.9日と見積もられた。自然の海でプエルルス幼生が採集される時期は5月~11月であり,したがって自然でのプエルルス幼生の期間には季節による大きな幅があるものと考えられる。また,自然で採集されるプエルルス幼生の色素発達段階は,5段階に区分した色素発達程度のうちの3期以上の個体が多く,このことはプエルルス幼生は変態後数日間は沖合い域で生息し,沿岸には生息していないことを示唆している。