ホームページによる人工衛星海況画像の公開
水産海洋研究第65巻第4号168-170(2001年11月)
久野正博・山川 卓・山田浩且(三重科技セ水)
内容
三重県科学技術振興センター水産研究部では1996年6月から,人工衛星NOAAによるAVHRRデータを直接受信し,海面水温の解析と情報提供を日々の業務として行っている。1997年2月から良好画像が獲られた日には基本的に毎日「人工衛星海況速報」をFaxにより提供している。これらの情報は人工衛星NOAAの画像をもとに1℃間隔で等温線処理し,黒潮流路や暖水波及を手で書き加えた図を基本とし,黒潮流路や熊野灘海域の特徴,短期予報等についても簡単な文章で記述している。この速報は,漁協等の関係機関にFaxで送付されるとともに,1997年3月からは,「さわやかファックスみえ」(三重県生活情報ファックスサービスシステム)での提供が開始され,漁業者のみならず広く一般からのアクセスも可能となった。このサービスの利用者数には季節的な変動が見られ,特に3~5月には年間を通して最高となる。これは春季のカツオ曳縄漁業の時期に対応しており,カツオ漁業に従事する漁業者がこの情報を漁場選択に活用していることがうかがわれる。
Faxサービスは大いに利用され好評であったが,利用者からは詳細なカラー画像の提供を望む声も大きかった。そこで,漁海況関係情報をホームページで公開できるように整備し,カラーでの人工衛星情報の提供を1999年5月10日から開始した。掲載している衛星画像は九州南方から房総沖までをカバーする画像で,1日合成画像である。利用者は早送りや巻き戻し機能のついた動画検索画面のサムネイル画像で雲量などの概略を判断した上で,見たい日付の大画面の画像を表示することができる。さらに,各自の必要とする海域について画面上で自由に拡大,縮小したり,画像のドラッグにより表示位置の移動を行うことが可能である。バックナンバーの検索は1996年6月1日までさかのぼって行うことができ,画像データベースとしての利用が可能である。また1999年12月には,等水温線図の重ね合わせ(ON,OFF)機能が付加されるとともに,CATVネットワークなどの高速通信網の整備に合わせた大画面動画の提供も開始された。
従来からの白黒の線画でのFax情報に比べてホームページ上からのカラー画像の提供は
- 色の違いで水温の高低がわかるので,誰でも簡単に水温分布状況がイメージできる
- 連続した色の変化として水温をとらえることができるので,1℃に満たない微妙な水温の違いも判別できる
- 画像が自由に拡大,縮小できるので,各自の目的に応じた利用が可能である
- 動画検索により,容易に過去の画像が検索できる
- 動画を利用すれば黒潮流路の動きや暖水波及等の過程が一目瞭然である
- 雲の分布状況が視認しやすいので,初めての利用者にも誤解される恐れが少ない
- このため,雲の多い日の画像についてもそのまま掲載することができ,利用価値の判断をそれぞれの利用者に委ねることができる,さらには
- システム整備によって自動化処理が可能となり,生情報を加工せずに(情報量の劣化なしに),利用者に迅速に提供することができる
といった利点がある。