三重県沿岸で発生した養殖マガキの鰓着色現象と原因藻について
平成14年度日本水産学会春季大会講演要旨(2002年4月1日~5日)
畑 直亜・中西克之・山形陽一・小畑晴美(三重科技セ水)・ 磯和 潔(三重栽漁セ)・廣岡慎介(三重南勢志摩県民局)・ 太原英生(的矢湾養蛎研)・天野秀臣(三重大生物資源)
目的
2001年1月に三重県鳥羽市沿岸において,従来の赤変カキとは異なる養殖マガキの着色現象が発生し,その後の出荷に大きな影響が生じた。そこで,着色現象の発生状況について報告すると共に,カキ着色時に現場海域で優占していたハプト藻Chrysochromulina quadrikontaを原因藻と考え,本種による着色再現試験を実施したので報告する。
方法
2001年1月から3月に現場海域において,漁業者からの聞き取りも交えながら,着色カキの分布調査,プランクトン調査,着色カキの褪色経過の調査等を実施した。また,現場の着色カキを当センターの水槽で隔離飼育し,褪色経過を観察した。着色再現試験には,2001年1月12日に現場海水より単離したC.quadrikonta単離培養株を用いた。培養した本藻を餌料として,マガキを2週間水槽飼育し,飼育終了時に着色状況を観察すると共に,一部は引き続き飼育して褪色経過も観察した。
結果
養殖マガキの着色は,2000年12月下旬の赤潮発生に続いて発生した。2001年1月5日には,漁場全域のマガキが例外なく着色していた。1月以降は徐々に褪色しつつも,着色は3月まで継続した。今回の着色カキが従来の赤変カキと異なる点は,鰓および唇弁のみが茶褐色に着色し,色素の浸出がみられないこと,容易に褪色しないことであった。1月5日の調査時には赤潮は既に終息しており構成種は確認できなかったが,このとき海域ではC.quadrikontaが500cells・ml-1の密度で優占していた。C.quadrikontaによる着色再現試験では,現場のものと同様の鰓および唇弁の着色が再現され,本種が着色の原因であった可能性が強く示唆された。