イセエビ幼生の脱皮のタイミングに及ぼす水温変化の影響
平成18年度日本水産学会春季大会講演要旨(2006年3月29日~4月2日)
松田浩一○・竹内泰介(三重科技セ水)
目的
イセエビ幼生(フィロゾーマ)の脱皮は通常,日の出前後(人工照明下では明期の開始前後)の短時間に見られるが,水温が短時間で変化した場合には脱皮のタイミングが変わる。ここでは,幼生の脱皮に関連するへい死の防止策を検討する際の基礎的な知見を得ることを目的として,幼生の脱皮のタイミングに及ぼす水温変化の影響について調査した。
方法
2004年7月にふ化し,40L容水槽を用いて水温24℃で流水飼育していた幼生を供試した。この時の日長時間は12L:12D,明期の開始時刻は8時30分で一定とし,従って幼生は8時30分前後に脱皮していた(ここで,8時30分を脱皮予定時刻とする)。実験は,幼生を流水飼育から1Lガラス容器を用いた止水飼育に移して行った。1L容器は24℃に調整した温浴水槽に保持し,その後脱皮予定時刻の0.5-22.5時間前に18,20,22℃,及び26℃の温浴水槽に容器を移すことで飼育水温を変化させ,脱皮時刻の変化を観察した。また対照として,一部の容器では水温変化を施さず一貫して24℃を保った。
結果
水温を変化させなかった幼生は8時30分前後に脱皮したが,水温を低下させた幼生では脱皮時刻は遅くなり,水温変化が大きいほど脱皮時刻の変化は大きくなった。一方,水温を上昇させた幼生の脱皮時刻は早くなった。ただし,脱皮予定時刻の14.5時間より前に水温を変化させた幼生の脱皮は,それ以後に変化させた幼生より脱皮予定時刻に近づく傾向が見られた。したがって,脱皮のタイミングは水温変化に強く影響を受けるが,脱皮予定時刻の14.5時間より前に水温変化が起こった場合には,脱皮予定時刻に向けた調整が働くと推察された。