伊勢湾南部海域におけるDinophysis属モニタリングへのLC-MSの導入
平成18年度日本水産学会春季大会講演要旨(2006年3月29日~4月2日)
畑 直亜(三重科技セ水)・鈴木敏之(水研セ東北水研)
辻 将治・中西麻希・西村昭史(三重科技セ水)
目的
三重県沿岸では下痢性貝毒による二枚貝の出荷規制事例が散発的に確認されている。しかし, Dinophysis属の出現密度と二枚貝毒化との対応関係は不明瞭な事例が多い。そこで,液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC-MS)を活用し,海水中のDinophysis属の出現密度だけでなく,毒量の変化をモニタリングすることにより, Dinophysis属と二枚貝毒化との関係解明および二枚貝の毒化予知精度の向上を目的とした。
方法
伊勢湾南部の鳥羽海域において,2004年4月~8月に週1回の頻度で小型プランクトンネットの鉛直引きにより海水試料を採集した。海水試料は,検鏡によるDinophysis属の計数とLC-MSに供した。また,ムラサキイガイを随時採取し,LC-MSに供した。なお,ネット採集の導入にあたり,引き網速度およびDinophysis属の推移把握の的確性について検討した。
結果
引き網速度10~72cm/secにおいて採集されたDinophysis属の細胞数は1,188~9,353cells/netであり,速度が速いほど採集量が多くなる傾向が見られた。また,ネット採集と従来の層別採水(4層)によるDinophysis属の出現密度の推移には相関が認められた(r=0.73)。海水試料中の優占種Dinophysis acuminataと主要毒成分PTX2との間に相関が認められ(r=0.91),さらにPTX2とムラサキイガイの主要毒成分PTX2saとの間に相関が認められた(r=0.64)。これにより,三重県で発生するD. acuminataの毒成分はPTX2が主体あり,ムラサキイガイはPTX2を無毒のPTX2saに変換して蓄積している可能性が示唆された。