木曽三川感潮域におけるヤマトシジミの漁獲量変動
平成16年度水産海洋学会研究発表大会講演要旨(2004年12月3日~5日)
水野知巳○(三重科技セ水)・関口秀夫(三重大生資)
緒言
ヤマトシジミを主体としたシジミ類は本邦の内水面漁獲量の約33%を占め,重要な漁獲対象資源となっている。木曽三川感潮域は,宍道湖や利根川に次ぐヤマトシジミの産地となっており,年間2000-4000トンが漁獲されている。
シジミ漁業は1970年代後半のハマグリ漁業の衰退に伴い,盛んに行われるようになった漁業であり,1980年代の年間10,000トンの漁獲量と比較すれば漁獲量は減少しているものの,木曽三川では現在も最も主要な漁業となっている。
演者らは2001年以降,当海域におけるシジミの漁場形成機構や資源変動要因を解明するため,浮遊期から漁獲サイズに至るまでの成長段階別の時空間分布や個体群動態を調べているが,今回は漁獲統計の解析から得られた知見について報告する。
方法
木曽三川水域でシジミの9割を漁獲している赤須賀漁協,伊曽島漁協,木曽岬漁協から入手した1996年~2003年の期間の漁獲台帳から,月別の漁獲量と漁獲努力隻数を河川別に整理し,CPUEを求めた。
さらに,CPUEが減少する夏季から冬季の期間にCPUEの累積漁獲量に対する回帰直線を求め,河川別に初期資源量を算出した。
結果及び考察
- 月間漁獲量と月間CPUEの季節変動 揖斐長良川,木曽川とも月間漁獲量,月間CPUEは春季から夏季に増大し,夏季から冬季に減少する変動パターンを繰り返した。両河川の月間CPUEと月間漁獲量は高い相関を示した。
漁獲個体群の殻長頻度分布の解析によれば,両河川とも春季から夏季にかけて漁獲個体群への加入があり,漁獲対象群は主に当年の新規加入群から形成されている。このことから,夏季から冬季に月間CPUEが減少する要因は,漁獲に伴ってこの新規漁獲加入群が減少するためと考えられる。 - 初期資源量と年間漁獲量
初期資源量は,1996~1997年には揖斐・長良川では2100~1800トン、木曽川では1600~1900トンあったが、その後は減少傾向で推移しており,2001~2002年には揖斐・長良川では800~1200トン、木曽川では1000~1200トンになった。
年間漁獲量は当年の初期資源量に連動しており,各年とも初期資源量の70%以上が漁獲され,漁獲圧力が高いことが示唆された。