平型水槽を用いたイセエビの中後期フィロゾーマ幼生の飼育
平成16年日本水産学会大会要旨(2004年4月1日~5日)
松田浩一・竹内泰介(三重県科学技術振興センター 水産研究部)
目的
三重県では,沿岸漁業の重要な対象種であるイセエビの稚エビ量産化のための技術開発を実施している。今回,イセエビの中後期幼生の飼育に適した水槽を開発することを目的に、新たに平型水槽を考案し,幼生飼育を試みたところ,生残率が格段に向上したので,その結果を報告する。
材料と方法
日令123まで従来からの円型水槽で飼育したフィロゾーマ幼生(平均体長11.5mm)を飼育実験に供した。用いた水槽は40L容平型水槽(85×60×15cm)で,水深が浅いことが特徴となっている。飼育開始時の幼生密度は,1水槽あたり40,65,90個体の3条件とし,各条件で平型水槽2水槽を用いて全ての幼生がへい死またはプエルルス幼生へ変態するまで飼育した。飼育水温は24℃,餌料としてアルテミアとムラサキイガイ生殖腺を用いた。飼育水槽は毎週1回清浄なものと交換した。
結果と考察
プエルルス幼生へ到達するまでの生残率は,40,65個体を収容した水槽では51~55%で差がなかったが,90個体を収容した水槽では30,43%と有意に低かった。プエルルス幼生へ到達するまでの日数には密度による差はなかった。幼生のへい死原因として,脱皮失敗,細菌性疾患,共食いが全ての水槽で多く見られた。また,飼育密度が大きい水槽では,胸脚を欠く個体が多かった。以上のことから,中後期幼生の飼育水槽として今回製作した平型水槽は有効であり,幼生収容数は65個体程度が適当と考えられた。なお,この平型水槽を主に用いた平成14年のふ化幼生の飼育により297個体の稚エビの生産に成功し,単年の生産個体数として最高を記録した。