木曽三川感潮域のヤマトシジミ漁業と漁場形成
平成15年度日本プランクトン学会・日本ベントス学会合同大会講演要旨(2003年11月22日~24日)
水野知巳○(三重科技セ水)・南部亮元・関口秀夫(三重大生資)
緒言
ヤマトシジミを主体としたシジミ類は本邦の内水面漁獲量の約33%を占め,重要な漁獲対象資源となっている。木曽三川干潮域は,宍道湖や利根川に次ぐヤマトシジミの産地となっており,年間3,000トンが漁獲されている。シジミ漁業は1970年代後半のハマグリ漁業の衰退に伴い,盛んに行われるようになった漁業であり,1980年代の年間10,000トンの漁獲量と比較すれば漁獲量は減少しているものの,木曽三川では現在も最も主要な漁業となっている。著者らは1991年以降,当海域における漁場形成機構や資源変動要因を解明するため,ヤマトシジミの成長段階別の時空間分布や加入時期を調べているが,今回は漁獲対象サイズの解析から得られた知見について報告する。
試料と方法
採集は2001年5月から2003年3月までの約2年間にわたって,月1回の頻度で揖斐川及び木曽川の干潮域で行われた。採集地点は両河川干潮域を河口から上流に向かって1km,3km,5km,7km,9km,12km地点及び,揖斐川の河口から海側に向かって1km地点に設定した。各地点では間口50cmのジョレンをもちいて,シジミ漁場となっている水深3mまでの浅場について100m曳きを行った。さらに,同海域を漁場としている赤須賀漁協,伊曽島漁協,木曽岬漁協から入手した漁獲台帳を整理し,あわせて解析した。なお,着底稚貝,稚貝,大型個体,漁獲サイズのそれぞれの殻長は0.3mm未満,0.3-1mm,1-10mm,12mm以上と定義する。
結果及び論議
揖斐川では,稚貝の着底場所となっている干潮域の上流側の測点(9,12km)では漁獲サイズの密度は少なく,下流側の測点(1-5km)を中心に密度が高かった。一方,木曽川では,稚貝の着底場所となっている上流部の測点(9,12km)において漁獲サイズの密度も高かった。
両河川とも3月から7月にかけて漁獲サイズへの加入があり,着底から漁獲サイズに加入するまでの期間は少なくとも2年を要する。漁獲対象群は主に新規加入群から形成されており,加入後,漸次密度は低下していく。
冬季に両河川においてCPUEが減少する要因は,漁獲に伴い新規加入群が減少するためと考えられた。また,貧酸素の発生する夏季から秋季に死貝が増加することから貧酸素による斃死も資源の減少の一因となっている可能性も否定できない。