養殖魚から分離されたLactococcus garvieaeの薬剤感受性
第134回日本獣医学会学術集会(2002年9月19日~21日)
小島明美1、小畑晴美2、小澤真名緒1、佐々木貴正1、高木昌美1
(1動薬検、2三重県科学技術振興センター水産研究部)
背景・目的
α溶血性レンサ球菌症は、Lactococcus garvieaeを原因菌とし、主にブリの養殖場で重大な被害をもたらす疾病の一つである。従来、本症への対策は抗菌剤に大きく依存してきたが、耐性菌の出現が懸念されてきた。養殖魚由来菌の薬剤耐性に関する調査・研究は、これまでにも部分的には実施されてきたが、実際にどのような耐性菌が養殖魚間に存在しているのかはまだ不明な点が多い。今回は、養殖場で本症を疑う病魚から分離した株を同定し、その薬剤感受性を調べ、現在の野外流行株の性状について基礎的知見を得るための検討を行った。
結果・考察
野外株は全てが生化学的・遺伝子学的性状解析によってL. garvieaeと同定された。薬剤感受性試験では、β-ラクタム系や新キノロン等には感受性であったが、テトラサイクリン系、マクロライド系薬剤及びリンコマイシンに対して二峰性の分布が見られるものがあり、野外株の6割が共通してこれらの薬剤に多剤耐性を示し、多剤耐性株のみがプラスミドを保有していた。このプラスミドにはテトラサイクリン系及びリンコマイシン+マクロライド系の薬剤耐性遺伝子の存在が確認された。対照とした各種ワクチン株はいずれも今回の野外株のような汎用される抗菌剤に対する多剤耐性はなかった。近年、予防主体の魚病対策に力が入れられ、ワクチンが広く利用されることにより、本症の発生は減少傾向にある。本症に関して、抗菌剤の使用に依存した対策から、ワクチンによる防疫が推進されることにより、耐性菌の発生の減少も期待される。一方で今後は、このような薬剤耐性プラスミドの由来等の背景に関する解析も必要と考える。