三重県水産研究に100年(創立百周年記念誌)
発刊にあたって
三重県科学技術振興センター水産技術センター所長 小泉 勝
三重県水産試験場(現水産技術センター)は、明治32年5月に創設されました。全国では3番目の設立であり、当初は三重県庁内に開設されましたが、同年10月に浜島の地に仮場舎を設置し、試験研究業務の第一歩を踏み出しました。さらに明治34年3月には同地区内の本場舎ヘ移転し、その後昭和の年代に入って川越養魚場、尾鷲支場の設置等、幾多の変遷を経て平成11年に創立100周年を迎えることができました。
顧みますとこの間一世紀、社会情勢の変化に呼応して様々な研究に取り組んで参りました。漁業の発展が沿岸から沖合へ、更に遠洋へと進んで行った時代には、指導練習船によって漁場開発等の先導的役割を果たし、また内湾における真珠や魚類養殖業については県の代表的産業に育て上げるために尽力し、さらに200海里時代を迎え、つくりそだてる漁業への転換が進められる中では、魚介類各種の種苗生産技術を確立し、栽培漁業センターへの技術移転という重要な役割を果たすとともに、世界で初めてイセエビの種苗生産に成功するなどの特筆すべき成果もあげることができました。このような100年間に果たしてきた水産試験場の役割を思うと誠に感慨深いものがあります。これらの調査研究に多大なる御努力と御尽力そして御協力をいただいた諸先輩ならびに関係者の皆様に、心から敬意と感謝の意を表するものであります。
このたび、100周年を迎えたことを機に、創設から現在までの足跡を記録としてとどめるため、関係資料の収集、編集を行い、ここに「水産試験場・水産技術センターの100年」を発刊することといたしました。刊行にあたっては、その内容を出来るだけわかりやすく、また読みやすくすることを心がけました。このため、学術的な資料としては不充分な点もあるかと存じますが、本趣旨をご理解のうえ、ご容赦いたたければ幸いと存じます。
今21世紀を目前にして日本の水産業界は大きく変化しようとしております。生物資源の持続可能な科学的管理、加えてそのための環境保全に関する研究が重要な課題となっております。水産技術センターでは、幾多の困難を克服し数々の業績をあげてこられた先人の方々に続くべく、職員一同心を1つにして、漁業関係者や県民のニーズに的確に応えられるよう、今後なお一層努力してまいりたいと考えております。更なる御支援、御協力の程、お願い申し上げます。
最後に、この100年誌編纂にあたり、本務のかたわら編集、執筆業務に努力された職員方々、ならびに取材に御協力いただいた先輩諸兄、また編集に多大なるご協力を戴いた海の博物館石原館長をはじめ関係者各位に厚く感謝の意を表する次第であります。
平成12年1月