おさかな雑録
No.105 ノミノクチ 2017年4月3日
ようやくお目見え
ノミノクチ 南伊勢町贄浦 平成29年3月31日撮影
活魚水槽にて見慣れないハタ類を発見。体に斑点があって、背に黒斑が並んでいます。斑点のあるハタ類で最もよく見かけるのはオオモンハタ、次いでキジハタですが、どうやらいずれとも異なるようで、ついにノミノクチと出会えたかと心が躍りました。研究室に帰って画像を検討したところ、背鰭棘数が11であること、尾鰭後縁が丸いこと、体に暗色横帯がないこと、体側及び尾鰭の斑点が網目模様を形成すること、胸鰭全体に暗色の斑点がないこと、体の背縁に黒斑があること、体側の暗色斑の濃さはほぼ一様であることから、ノミノクチであると判断されました。なお、この個体では背縁の黒斑は背鰭の前半、中央部に大型、後半部に小型が、尾柄に大型があるように見えますが、参照した図鑑には前半の1個が記載されていませんでした。
ノミノクチは特に珍しい魚というわけではないようですが、どういうわけかこれまで見た覚えがなく、見たいと強く願う魚の一つでした。
キジハタ 南伊勢町贄浦 平成29年3月31日撮影
ノミノクチのすぐ近くの水槽で、ちょうどキジハタも見ることができました。キジハタの斑点は赤褐色で、背鰭基底中央部に黒斑があることが特徴とされていますが、上の写真のように尾柄や背鰭基底の前半部、後半部にも暗色部があって、暗色斑があるように見えたり、不明瞭な横帯のように見えることもあります。また、斑点の色はキジハタは橙色、ノミノクチは暗赤色で、尾鰭の斑点の有無も異なりますが、斑点にはノミノクチにもキジハタにも暗いものや明るいものがあって、「赤っぽい斑点のあるハタ」と言われた場合、どちらか判断するのは難しいと感じます。
ともあれ、今回ようやくノミノクチの実物を確認することができたので、今後はきちんと区別することができそうです。
オオモンハタ 南伊勢町贄浦 平成21年9月24日
こちらは初めに名前が挙がったオオモンハタです。斑点のあるハタとしてはノミノクチやキジハタと共通ですが、尾鰭後縁がほぼまっすぐで、白い縁取りがあることが特徴です。これらの魚は、体の色や模様は個体差もあって混乱しがちですが、鰭の形や模様、また縁辺部の色などに着目すると見分けやすいようです。
(2017年4月3日掲載 企画・資源利用研究課)