英虞湾の環境問題と干潟の現状
英虞湾の環境問題
英虞湾では、毎年のように赤潮と貧酸素水塊が発生し、真珠養殖をはじめ海域の生物生産が低下する等の環境悪化が問題となっています。これまでの研究で、その原因の一つが干潟消失による自然浄化能力の低下にあることがわかっています。
赤潮
赤潮とは、海水中で微小な生物(主に植物プランクトン)が異常に増殖して、そのため海水の色が変わったり、有害な種類が増えたりする現象をいいます。魚介類のエサとなる珪藻などの植物プランクトンも、増えすぎると環境によくありません。植物プランクトンはやがて死に、その死骸は海底にたまり、貧酸素化をひきおこすからです。チッ素やリンは植物プランクトンのエサですので、たくさんのチッ素やリンが海に流れ込むと、湾内の植物プランクトンが増え過ぎ、赤潮になります。
平成4年、アコヤガイなど二枚貝を殺すヘテロカプサという新しい植物プランクトンの赤潮が発生するようになりました。それ以降、たびたびヘテロカプサ赤潮はおこり、真珠養殖に被害を出しています。
ヘテロカプサ赤潮(2004年8月13日、多徳島前) |
ヘテロカプサ赤潮で死んだアコヤガイ |
貧酸素化
貧酸素化とは、海水中の酸素(溶存酸素)が少なくなっていくことをいいます。また、溶存酸素量が3mg/l以下の状態を貧酸素状態といいます。英虞湾では夏場に海底から貧酸素化がおこります。 夏場、英虞湾の湾奥部の海底は、貧酸素化するため、ほとんど生き物がいなくなります。貧酸素化は、漁業に大きな打撃を与えるだけでなく、本来もっている海の浄化力も奪います。
英虞湾では毎年のように貧酸素化がおこります。特に6月から10月にかけて湾中央から湾奥部の海底の酸素がなくなってしまいます。海水中の酸素が少なくなると、魚は逃げることができます。しかし、貝やゴカイのように海底に住む生き物は、逃げることができず、死んでしまいます。平成14年には、大規模な貧酸素化がおこり、真珠養殖を始め多くの漁業や英虞湾の生き物に被害を出しました。
貧酸素による二枚貝の大量死(2002年10月) |
夏の英虞湾の貧酸素エリア |
英虞湾の干潟の現状
英虞湾では、毎年のように赤潮と貧酸素水塊が発生し、真珠養殖をはじめ海域の生物生産が低下する等の環境悪化が問題となっています。これまでの研究で、その原因の一つが干潟消失による自然浄化能力の低下にあることがわかっています。
英虞湾では,江戸時代以降湾奥部の水田干拓により, 70%以上の干潟が消失し,現在はその85%以上が沿岸休耕地となっています.しかし、一度干拓された沿岸休耕地を干潟に再生するためには、管轄する行政部局や地元住民の方々の理解を得る必要があります。
英虞湾内の干潟面積の変化 |