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平成26年12月01日

スギ・ヒノキ人工林伐採跡地において広葉樹の天然更新は可能か?

                                      林業研究所 福本 浩士

1.はじめに

 スギ・ヒノキ人工林から生産される材は、従来の建築用材だけでなく、木質バイオマス資源として需要が高まることが期待されており、皆伐施業も増加すると予想されます。また、高齢級に偏りつつある人工林の齢級分布を平準化するために、皆伐・再造林施業を進めていくことも期待されています。 

 しかし、木材価格の長期低迷、ニホンジカ(以下、シカ)による苗木食害のため、皆伐後に再造林を実施しない事例(伐採跡地)が増加しています。通常、伐採跡地は広葉樹林へと遷移していくと期待されていますが、ニホンジカによる食害のため、森林の更新が阻害されている状況です。

 人工林の皆伐後に植栽し、再森林化を行うことは、森林機能の低下を防止するうえで必要不可欠です。しかし、地位が低い場所(スギ、ヒノキの成長量が著しく低い場所)や、地利が低い場所(林道・作業道から離れており、搬出・運搬に多額の経費がかかる場所)は、皆伐後に天然更新によって、広葉樹林へと誘導することも再森林化の選択肢の一つであると考えられます。

 現在、林業研究所では伐採跡地の植生調査を実施しており、広葉樹の天然更新の可否に関わる条件(標高、傾斜、過去の森林利用履歴、隣接広葉樹林の有無、スギ・ヒノキ人工林伐採後の経過年数)を整理し、これらの条件から天然更新の可否を予測する方法について検討を行っています。今回は、県内でもシカの生息密度が高い地域である櫛田川上流域での調査結果を報告します。

 2.伐採跡地の植生の概要

 伐採跡地の植生調査は13ヶ所の伐採跡地で行い(表-1、写真1~3)、各林分において1~3個の方形プロット(10m×10m、ただし立木密度が高い場合は5m×5m)を合計33個設定しました。現地調査は、樹高1.5m以上の木本植物の種、樹高、胸高直径を記録しました。33個の調査プロットのうち、樹高1.5m以上の木本種が確認されたのは15プロットでした。

 表-2に調査プロットに出現した木本の種を生活形(高木、小高木、低木)ごとに示します。高木性14種、小高木性7種、低木性16種を確認しました。高木性種のうち、カナクギノキは樹高1.5m以上の木本が出現した15プロット中9プロットで確認されました。次いで、シロダモ、クマノミズキの3プロット、クリ、ヒメシャラ、ユズリハの2プロットでした。小高木性種では、ソヨゴが5プロット、カマツカが4プロット、シキミとアセビが2プロットで確認されました。

 

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 写真-1 伐採後9年経過した人工林跡地高木性樹木は生育していない

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 写真-2  伐採後15年経過した人工林跡地高木性樹木が密に生育している

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  写真-3  伐採後18年経過した人工林跡地高木性樹木が密に生育している

 

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 3.広葉樹林の成立を予測する

 樹高1.5m以上の高木性樹種の成立本数を4段階(500本/ha、1,000本/ha、2,000本/ha、3,000本/ha)で設定し、成立本数がそれぞれの基準値を超えるか否かを、広葉樹の天然更新に関わる要因と関連づけて検討しました。 

 広葉樹の成立本数500~1,000本/ha程度を期待する場合は、標高が低く、周囲に広葉樹林が存在し、拡大造林された場所であれば、高い確率で広葉樹の成立を期待できることが分かりました(ただし、必ず広葉樹が成立するというわけではありませんので注意してください)。一方、2,000本/ha以上の成立本数を期待する場合は、拡大造林した場所で、シカが歩行しにくい急傾斜地でしか高い確率で成立しないことが分かりました。さらに3,000本/ha以上の成立本数を期待する場合は、伐採後、長期の時間が必要であることが分かりました。   

 今後、櫛田川流域だけでなく、他の流域でも同様の調査を行い、県内の広い地域で利用できる予測手法の開発を行う予定です。

 4.おわりに

 伐採跡地を人間の手を加えずに広葉樹林へと誘導することは簡単なことではありません。誘導可能な場所は限られており、高木性広葉樹林の成立のためには長期の時間が必要であることが分かりました。すなわち、短期間で広葉樹林へと誘導するためには、人工植栽することが必要であると考えられます。

 今回の調査で確認された木本種は、シカによる採食耐性が高い種(食べられても枯れずに生き残る種)、あるいは嗜好性の低い種(あまり好きでない種)が多い傾向にありました。例えば、カナクギノキ、シロダモ、サカキ、ヒメシャラ、ユズリハ、クマノミズキは調査した伐採跡地において出現頻度の高い種でした。伐採跡地に人工植栽する場合、これらの種を採用するとシカ柵を設置することなく広葉樹林への誘導が図れるかもしれません。

 

本ページに関する問い合わせ先

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