林業研究所ではニホンジカのGPS行動圏調査を行っています。
本県ではニホンジカによる林業被害が年々増加しています。林業研究所では、被害軽減を目的として効率的な対策を講じるため、本年3月より1年間の予定で松阪市飯高町地内において、ニホンジカのメス2頭にGPS受信機付き首輪を装着して行動圏調査を行っています。
これまでの調査データ(3月28日~6月17日)を分析したところ、次のことが判明しました。
1.これまでの調査で分かったこと
(1)2頭のニホンジカの行動圏(最外殻法)はそれぞれ48haと103haで、集落周辺(標高約420m)から尾根付近(標高約1000m)までを移動していました。
集落に出没するニホンジカは、集落周辺だけを生息場所としているのでなく、集落の後背部に存在する森林全体を利用していることが判明しました。
(2)スギ・ヒノキ人工林、人工林伐採跡地、新植地周辺、耕作放棄地をまんべんなく移動しており、これらの場所を採食場所として利用しているものと思われます。
(3)現時点では、森林と集落の間に設置した侵入防止柵を越えて集落には侵入しておらず、その効果を確認できました。
2.今後の予定
(1)ニホンジカの行動圏の季節的変化、利用する場所や森林被害が発生する場所の特徴を明らかにします。
(2)ニホンジカが採食場所として人工林伐採跡地、耕作放棄地にどれだけ依存しているかを明らかにします。
(3)引き続き、新植地、農地の周囲に設置したシカ侵入防止柵の効果を確認するとともに、効率的に捕獲できる場所を抽出します。
3.期待される成果
本調査により得られたニホンジカの行動圏やその特徴、被害状況等のデータをもとに、どのような環境で被害が発生しやすいかを分析し、森林被害予測図(ハザードマップ)を作成します。
また、ニホンジカの行動様式を考慮した捕獲手法の開発を進めます。これらにより、被害対策(防除や捕獲)を効率的に進めることができます。
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