木材重量による含水率の予測
三重県林業研究所 小 林 秀 充
◆はじめに
住宅工法の変化や高気密化により、寸法変化や反りなどの形状変化の少ない木材が求められています。そうした材を供給するためには、一定の含水率まで乾燥させた材を生産することが重要となります。
しかし、初期含水率の異なる材を同じ条件で乾燥をしても、そろった含水率で仕上げることは難しいことがわかっています。当研究所が三重県産スギ平角材(125㎜×250㎜×3,500㎜)を用いて行った乾燥試験の結果では、表-1の乾燥スケジュールで乾燥したところ、初期含水率が100%以下のものについては、仕上がり含水率を20%程度以下にすることが出来ました。しかし、初期含水率が100%を超えるものについては、仕上がり含水率が20%以下まで乾燥できない材が多く発生しました(図-1)。このことから、表-1のスケジュールで乾燥を行う場合には、仕上がりの含水率をそろえるために、初期含水率をある程度そろえておくことが重要であるといえます。
表-1 スギ平角材乾燥スケジュール
図-1 生材時と仕上がり時の含水率
今回は、初期の含水率をそろえるためのおおよその目安として、過去に乾燥試験を行った際に計測した木材の重量と含水率の関係をまとめてみましたので報告します。
◆含水率の計算方法
木材の含水率は、水分を含んだ木材の重さと「全乾状態」(水分が全く含まれていない状態)まで乾かした時の重さの差を出し、全乾状態の時の重さで割って計算します。これを計算式にすると下記のとおりとなります。
上の式に示すように、木材の含水率は全乾状態の木材重量 (W
◆含水率計による計測
前述した式による含水率は、試験片を採取して全乾重量を求め計測を行います。しかし、この方法では材を切断しなければならず、現実的ではありません。このことから、非破壊で含水率の計測を行うために含水率計が用いられます。
含水率計は、測定方法により、高周波式、マイクロ波式等(図-2)に分かれ、また、設置型と携帯型に分類されます。なお、JASの針葉樹の乾燥材品質管理のための含水率検査で使用される含水率計は(財)日本住宅・木材技術センターが認定している含水率計となっており、平成24年4月現在で携帯型3製品、設置型2製品が認定されています。
このような含水率計は、容易に含水率が計測できる反面、乾燥後などの含水率が低くなった材を計る際はあまり問題がないのですが、乾燥前などの含水率の高い材を計測する場合には誤差が大きくなる傾向があります。また、木材の木口付近と中心部など計測する場所で含水率が異なるため複数個所計測する必要があります。これらのことから、生材時の含水率を含水率計で仕分けるとなると誤差が大きいうえに大変な作業となることが考えられます。
図-2 高周波型(上)とマイクロ波型(下)の携帯含水率計
◆木材の重量と含水率
図-3は三重県産のスギの単位重量(kg/m3)と含水率の関係を示したグラフです。
これは、三重県産スギ平角材(125㎜×250㎜)と柱材(135㎜×135㎜)の生材時と仕上がり後の重量と含水率を計測し、その結果をグラフ化したもので、横軸は木材の重量をm3当たりの重さに換算した数値を用い、縦軸は各々の重量の時の含水率を示しています。また、このグラフの試験体の数は572体で北勢地区、中勢地区、伊賀地区、松阪地区で伐採された材を用いており、スギ生材重量と含水率の間には、以下の直線関係が認められます。
Y=0.284X-90.952
Y:含水率(%)
X:m3当たりの重さ(kg/m3)
[X=木材重量÷体積]
◆乾燥方法決定の例
スギについて、この式によりおおまかではありますが、生材重量から対象とする木材の平均的な含水率の予測は可能であると考えます。
この含水率を用い「はじめに」で説明をしたスギ平角材をおおよそ20%程度に乾燥する場合には、図-4のように含水率100%未満と100%以上に分けて乾燥方法を検討することが効果的と考えられます。
図-4 乾燥方法決定のフローチャート例
◆おわりに
今回の含水率推定式は、乾燥初期に生材の含水率を用いて仕分けする目安として紹介いたしましたが、あくまでもこの式はおおよその含水率を示すものです。
このため、製品としての品質管理に用いるほど精度が高いものではありませんので注意をお願いします。