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平成27年03月18日

ドローンによる空中写真画像を用いた森林資源情報の把握

林業研究所  島田博匡

◆はじめに
 近年、ドローンの普及が急速に進み、森林・林業分野においても様々な活用に向けた取り組みが行われています。また、ドローンによる空中写真画像(以下、ドローン空中写真)からSfMソフトにより3Dモデルを作成して、画像を平面データから三次元データにすることで、森林資源情報の把握まで行うことができるようになっています。本稿では、ドローン空中写真を用いた森林資源情報の把握について、手順を追いながら解析事例を紹介します。

◆ドローン空中写真の撮影と画像解析
 2019年8月、津市内の森林を対象として、ドローン空撮を行い、撮影画像を解析して単木レベルで森林資源情報を取得しました。
 今回の撮影に使用したドローンはDJI Phantom 4で、搭載されたカメラの画素数は1240万画素です。空撮は自動航行アプリDJI GS Proによって飛行計画(飛行範囲、飛行高度、ラップ率、飛行ルート等)を設定し、自動航行で実施しました。今回の空撮対象地は0.56ha、飛行高度(離陸ポイントを基準とした高度)40m、進行方向上のオーバーラップ率90%、隣接コース間のオーバーラップ率は80%とし、飛行延長536mで84枚の連続写真を撮影しました。
 撮影された84枚のドローン空中写真から、SfMソフトAgisoft Metashape Professionalを使用して3Dモデルを作成しました(図1)。SfM(Structure from Motion)は空中写真など複数の場所で撮影された写真から物体の三次元形状を復元する技術です。ラップ率の高い写真を使用することで、SfMソフトが自動的に写真間のマッチングを行い、生成された点群データに基づいて3Dモデルを作成できます。同時に樹冠表層標高モデル(以下、DCSM)、オルソモザイク画像(図2)が作成されます。これらは位置情報を持ったものが作成されますが、ドローンのGPS測位精度が良好でない場合があること、気圧センサーによる高度検出であるため、標高の精度には不安があることから、オルソ写真上の樹冠に覆われていない道路構造物や堰堤など座標がわかる既知点(以下、GCP)の座標値を使用してGISソフトで座標、標高を調整します(SfMソフトで行うこともできます)。


図1.作成された3Dモデル.連続した長方形は空中写真の撮影位置を示す.


図2.空撮対象地のオルソモザイク画像.白線の囲みは精度検証プロットの位置を示す.
 

◆森林資源情報の解析
 森林資源情報の解析には、ドローン空中写真から作成した10cmメッシュのDCSMを使用しました。DCSMは写真に写った表面高を示すモデルなので、樹高推定にあたり、地盤高を示す数値標高モデル(以下、DEM)との差分をとり、樹高を示す数値樹冠高モデル(以下、DCHM)を作成する必要があります。精度の高い推定値を得るには、航空レーザ測量データから作成した高精度DEMデータを使用することが望ましいので、今回は2017年8月に行った航空レーザ測量データから作成した50cmメッシュのDEMを使用し、GISソフトQGISのラスタ計算機により10cmメッシュのDCHMを作成しました。
 作成したDCHMを用いて、単木レベルで樹頂点抽出と樹冠範囲抽出、樹高と樹冠面積の推定(以下、推定樹高、推定樹冠面積)を行いますが、今回は統計解析ソフトRのパッケージForestToolsを使用して自動抽出しました(図3)。このパッケージではDCHMの全セルについて、各セル(今回は10cm×10cm)を中心として(中心セル)、中心セルの値に応じた大きさのウインドウ(探索範囲)を移動させていき、中心セルの値が最大となった場合に樹頂点の候補として抽出し、そのセル値を樹高とするものです。樹冠範囲は各樹頂点を中心として、セル値の勾配に沿って周囲に領域を拡大していき、隣接する他の頂点からの領域との間に境界を設定する方法で抽出し、その面積を樹冠面積とします。胸高直径(以下、DBH)については、過去に三重県内データを使用して作成した実測DBHと航空レーザ測量データから推定した樹高及び樹冠面積との関係式(山本、未発表)を用いて、推定樹高と推定樹冠面積から推定DBHを求めました。



図3.推定樹頂点と実測立木位置のマッチング.
背景は数値樹冠高モデル(DCHM).黒線で囲まれた範囲は樹冠範囲を示す.
 

◆解析精度の検証
 空撮対象地内の36年生スギ人工林には10m×20m(200m2)のプロットが設定されており、2017年12月にプロット内の全立木に対して樹高、DBH、座標が実測されています。現地実測個体とプロット内のドローン空中写真からの推定個体とのマッチングを行ったうえで(図3)、実測値と推定立木密度(樹頂点数)、推定樹高、推定DBHとを比較し、推定精度の検証を行いました。
 立木密度の実測値は52本/200m2(2,600本/ha)でしたが、推定値(検出木)は43本/200m2(2,150本/ha)であり、9本の立木が検出できませんでした。検出できなかった立木はいずれも劣勢木で、樹冠が隣接木の樹冠に覆われているものでした。これらは上空から樹冠が認識できないので検出が困難でしたが、主林木については概ね検出できたと考えられます。
 マッチングできた43本の立木の樹高とDBHについて、実測値と推定値を比較したところ、樹高については、両者間の相関は非常に高く(図4a)、誤差(RMSE)は0.51mでした。実測値と推定値の測定時期が1年半程度ずれており、その間の成長を考慮すると両者の誤差はさらに小さくなることから、良好な推定結果が得られたと考えられます。DBHでは、両者間の相関は樹高ほど高くなく(図4b)、誤差(RMSE)も2.5cmとやや大きめとなりました。
 今後は、推定精度の向上に向けて、解析技術を改善していく必要があります。また、飛行高度、天候、季節など空撮条件が解析結果に影響を及ぼす可能性があることから、最適空撮条件の検討も必要です。


図4.プロット内立木の実測値と推定値の比較
 

◆ドローンによる森林資源調査の限界
 森林資源調査のためのドローン飛行を行うにあたり、ドローン本体と送信機間の通信が途切れないように空撮対象地を見渡せ、航空法許可申請対象外の対地高度150m未満で飛行させることが可能な離陸ポイントを近辺で確保すること、樹冠に覆われていないGCPを空中写真に写し込めることが求められます。このような条件を満たす対象地は、起伏が大きく、広く森林が分布する山間部では簡単には見つかりません。ドローン調査はどこでもできるわけではないということを認識しておく必要があります。

本ページに関する問い合わせ先

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