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平成28年12月14日

ICTを活用して森林内でニホンジカを効率的に捕獲する

林業研究所 福本浩士

はじめに
 ニホンジカ(以下、シカ)を効率的に捕獲するためにICT(情報通信技術)の活用は有効であり、その技術は急速に進歩しています。例えば、大型囲い罠と遠隔監視・操作による捕獲装置(商品名:まるみえホカクン)を組み合わせることで、シカが高密度な地域においても罠に対するシカの警戒心を高めることなく、集中捕獲を実施することが可能になりました。また、大型囲い罠にAIゲート(商品名:かぞえもん)を取り付け、罠内部に侵入するシカを自動カウントすることで、通信環境が悪い森林内においてもあらかじめ設定した捕獲目標数に達すると自律的にゲートを閉じて捕獲する装置も開発されています。これらの捕獲装置は集中捕獲する上で有効な手段ですが、高価なため導入する際には費用対効果を十分検討する必要があります。
 シカの分布拡大の最前線である地域や集中捕獲後に低密度化した地域では、上記の捕獲装置に替えて、囲い罠や箱罠に赤外線・熱感知センサー(商品名:アニマルセンサー2)を装着し、画像通信可能な自動撮影カメラ(例えば、商品名:ハイクカムSP4G)(以下、通信カメラ)で遠隔監視することで、低コストで効率的にシカを捕獲できる可能性があります。また、くくり罠を用いて捕獲する場合でも、シカの出没状況、捕獲状況等を遠隔監視することで、現場巡視経費の削減、的確な罠移設時期の判断が可能となります。
 上記の点を検証するため、これまでに集中捕獲を実施し、シカの密度が低下しつつある地域において捕獲の実証試験を行いました。

大型囲い罠、赤外線・熱感知センサー、通信カメラを組み合わせた捕獲実証試験
 2017年9月13日、度会郡大紀町の造林地において、シカの出没状況、餌の消失状況、捕獲状況を把握するため、通信カメラを長さ4m×幅4m×高さ2mの移動組立式囲い罠(商品名:サークルD)のゲート外側に取り付ました。通信カメラの設定は6時間間隔のタイプラプス撮影とモーション感知撮影(撮影インターバル30分)としました。2017年9月21日に赤外線・熱感知センサーを装着し、ヘイキューブとしょうゆの搾り糟を餌として誘引を開始しました。複数頭のシカを捕獲するため、捕獲の段階では、センサーを囲い罠の端に取り付け、その下部に少量の誘引餌を、囲い罠の中央部に誘引餌をやや多めに配置しました。
 図-1に通信カメラで撮影されたシカの出没日時を頭数別に示します。


図-1 頭数別に示したシカの出没日時

 9月13日に給餌したところ翌日からシカが出没し、最大出没頭数は3頭でした(図-2)。


図-2 餌に誘引されたシカ(囲い罠の内側に2頭、外側に1頭いる)

 9月21日に再度給餌し、9月24日にオス1頭を捕獲しました(図-3)。なお、捕獲の直前直後は囲い罠の外側でシカの出没は確認されませんでした。10月3日に再び給餌を行い、10月7日にメス1頭とオス1頭を捕獲しました(図-4)。この時は、捕獲直後に成獣1頭が囲い罠の外側に出没したことを確認しました(図-5)。その後、再び給餌を行いましたがシカの出没が大きく減少したため、罠に対するシカの警戒心を高めた可能性があります。以上のことから、シカの出没頭数が1~2頭程度であれば、通信カメラで餌の消失状況、シカの出没状況を遠隔監視しながら、赤外線・熱感知センサーを取り付けた囲い罠でスレ個体の発生を最小限に抑えながら捕獲することが可能であると考えられます。


図-3 捕獲した1頭のシカ(オス)


図-4 捕獲した2頭のシカ(メスとオス)


図-5 2頭の捕獲直後に、囲い罠の外部に1頭のシカが出没した状況

くくり罠と通信カメラを組み合わせた捕獲実証試験
 2017年8月29日から2018年3月22日にかけて、伊賀市の山林において通信カメラで遠隔監視しながらくくり罠による捕獲試験を実施しました(図-6)。この期間、5頭のシカと1頭のイノシシを通信カメラ監視下で捕獲しました(図-7)。通信カメラによる遠隔監視の正確性を評価するため、現場巡視も併せて行ったところ、捕獲したシカ、イノシシはすべて通信カメラで確認することができました。以上のことから、通信カメラを用いることで捕獲状況(あるいは錯誤捕獲状況)を遠隔監視することが可能となり、現場巡視を行わずに状況確認できるとともに、シカの出没状況からくくり罠の移設のタイミングを的確に判断でき、効率的な捕獲が可能となることが示唆されました。


図-6 くくり罠設置場所付近に出没したオスジカ


図-7 くくり罠で捕獲されたオスジカ

本ページに関する問い合わせ先

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津市白山町二本木3769-1
電話番号:059-262-0110 
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