実施中の研究課題
試験研究の基本方針
森林は、県土の3分の2を占め、木材の生産をはじめ、水源涵養や地球温暖化防止、県土保全、保健休養など様々な形で我々の生活に関わっており、森林の有するこれらの機能を持続的に活用することは大きな課題となっています。
三重県林業研究所では、「三重の森林づくり基本計画」で示された研究推進方向、「三重県林業研究所研究推進方針」で定めた基本方針に従い多様化する県民のニーズに対応した研究の推進と実用的な技術の開発を行い、その成果の実用化・商品化を進めるとともに、情報の収集・提供を行うことで、林業・木材産業の振興はもとより、県民生活の安全・安心の確保、環境の保全に寄与することを目指しています。
平成30年度に行う試験研究課題は、以下のとおりです。
試験研究課題
林業技術開発事業
課題名 | No.1 自然栽培可能な高温発生型きのこ栽培技術の開発 |
---|---|
期間 | 平成28~30年度 |
目的 | きのこの空調施設栽培においては設備投資や夏場の冷房にかかる電力消費にコストがかかることから、施設整備を行わずに林地や育苗ハウス等既存の施設等を利用して栽培可能なきのこの開発が望まれています。そこで、比較的高温条件下でも発生が可能なきのことして、ウスヒラタケ、ハナピラタケ、ササクレヒトヨタケの野外および簡易施設等における安定生産技術を開発し、農林家の経営安定に寄与します。 |
課題名 | No.2 短期培養で生産可能なきのこ栽培技術の開発 |
---|---|
期間 | 平成29~31年度 |
目的 | 培養期間が短く、商品性の高い新しいきのことして、ヤマブシタケ、従来品とは異なったブラウン系大型エノキタケの栽培技術を確立し、菌床培養センターの施設回転率向上や生産者の経営安定に貢献します。 |
林業普及指導事業
課題名 |
No.3 県産ヒノキ中径材から採材されるラミナのヤング率推定技術の開発(新規) |
---|---|
期間 | 平成30~31年度 |
目的 | 県産ヒノキ中径材から採材されるラミナの木取り位置別の曲げヤング率と丸太の縦振動ヤング率の関係を調査し、必要とされる曲げヤング率以上のラミナを効率よく取得する際の縦振動ヤング率による丸太の選別基準とラミナの木取り位置基準を明らかにします。 |
課題名 | No.4 スギ・ヒノキエリートツリーのコンテナ苗木生産技術の開発(新規) |
---|---|
期間 | 平成30~32年度 |
目的 | コンテナ苗を効率的かつ安定的に生産する技術を開発するため、種子の大小や品種が育苗に与える影響や、温室栽培や施肥による効果を明らかにします。また、育苗過程におけるコストを分析することで、コンテナ苗を低コストに生産する方法を見いだします。 |
課題名 | No.5 森林作業道の路体支持力に影響する要因に関する調査 |
---|---|
期間 | 平成29~30年度 |
目的 | 異なる表層地質がみられる県内5つの地域において、既設作業道の路体支持力測定及び土質調査等を行い、既設森林作業道の現状把握と路体強度に影響する因子の解明を行います。 |
課題名 | No.6 三重県における早生樹種の育成技術の開発 |
---|---|
期間 | 平成29~31年度 |
目的 | センダン、外国マツについて、植栽試験、過去の植栽地の調査など行い、三重県におけるこれらの樹種の造林樹種としての適性、植栽適地を明らかにするとともに、育成技術を開発する。今年度は昨年度設定したセンダン植栽試験地において追跡調査を行い、植栽初年度の成長特性を明らかにします。また、昨年度に毎木調査を実施した53~55年生外国マツ林において樹幹解析を行い、様々な立地・密度条件における樹高、胸高直径の成長特性を明らかにします。 |
みえ森林・林業アカデミー設置・運営事業
林業事業体等で働く既就業者を対象とした「みえ森林・林業アカデミー」の平成31年4月の本格開講に向けた準備を進めるとともに、県内の受講対象者等に対し、PRすることを目的にプレ開講し、記念シンポジウムを実施するとともに、県内各地で実際の講座の一部を公開で行います。
※「みえ森林・林業アカデミー」は、既就業者を対象とし、職場における人材の役割に 応じた以下の3つの育成コースを設け、新たな視点と多様な経営感覚を持ち、中山間地域の活性化を担う林業人材の育成を目指しています。
1.ディレクター育成コース : 新たな視点や多様な経営感覚を持つ林業経営者
2.マネージャー育成コース : 経営方針を念頭に、コスト意識を持った現場リーダー
3.プレーヤー育成コース : 科学的な知識に基づいた森林管理が実行できる現場技術者
災害に強い森林づくり推進事業(事業効果検証に係る調査・研究事業)
「みえ森と緑の県民税」を財源とした「災害に強い森林づくり推進事業」の一環として行われている「災害緩衝林整備事業」において、事業実施効果の検証を平成26年度より実施しています。昨年度までに①山腹部における土砂流亡量調査、②航空レーザ測量データを用いた森林状況のモニタリング調査、③立木引き倒し試験による根系抵抗力調査を実施してきましたが、今年度はこれまでに得られたデータから事業効果についてとりまとめを行います。
優良種苗確保事業(林木育種事業)
県内で選抜された精英樹クローン等により造成された採種園と県内外の精英樹、在来クローン等を集植した原種採穂園の管理を行っています。また、平成25年度から造成しているスギ、ヒノキのエリートツリー、特定母樹によるミニチュア採種園等の育成管理を行うとともに、少花粉スギ等の種子採取を実施します。
森林病害虫等防除事業(マツノマダラカミキリ発生予察事業等)
マツクイムシ被害防除のための殺虫剤予防散布時期をより的確に把握するため、県内2カ所のマツ林から、マツノマダラカミキリ寄生木を採取し、4月下旬から成虫脱出日まで割材して幼虫の生育状況を調査し、成虫脱出後7月中旬までは成虫の脱出消長を調査します。
また、カシノナガキクイムシによる被害発生状況を治山林道課、各農林(水産)事務所と協力して調査します。