森林作業道の路体強度について
林業研究所 野村久子
◆はじめに
近年、機械化による効率的な森林整備を行うため、基盤となる森林作業道(以下、作業道)の整備が進められてきました。現在三重県内には約百万mにおよぶ作業道が作設されており、その延長は年々増加しています。
林業研究所では、今まであまり確認されてこなかった既設作業道の路体強度について現状把握するとともに、より強固な作業道づくりにつなげるための研究を行っていますのでご紹介します。
◆作業道に必要とされる強度
主としてフォワーダ等の集材機械の走行を目的に作設される作業道は、簡易設計・施工、土構造が基本の安価な道とされています。作設においては特に「土」の性質が重要となりますが、規格や路体強度の規定がなく、路体支持力などの強度確認がされていないのが現状です。一方、森林資源の充実に伴い立木は徐々に大径化しており、今後はより大型の林業機械の使用を想定した、強固な作業道づくりが必要であると言われています。林道や林業専用道は、林道規定に基づき設計・施工され、走行車両の種類や速度により強度や線形が決められています。では、規定がない作業道は何を目安に作設すればよいのでしょうか。
図-1 県内に作設された森林作業道
表-1 主な林業機械の接地圧
表-1に主な林業機械の接地圧を示します。接地圧とは単位面積あたりに作用する力の大きさで、重量/接地面積(KN/m2)で表されます。接地圧が小さいほど路面へ及ぼす影響は小さく、足回りがホイールタイプの林業機械(トラック)に比べ、接地面積が大きいクローラタイプ(フォワーダ、バックホウ等)の接地圧が小さい値となっているのがわかります。もちろん、降雨による路面浸食を防止するためにもできるだけ強固な路体を作設する必要がありますが、安全な作業を行うためには最低限、使用機械の接地圧に耐える路体強度が必要です。表中の接地圧は未積載時の値であるため、積載時や作業中にはこれ以上の力が路体にかかることになります。
◆既設作業道の路体強度
このように作業機械によって必要な路体強度が異なる作業道ですが、実際に既設作業道の路体強度はどの程度でしょうか。現状を把握し、作業条件との関係を調べるための調査を行いました。
調査は、多様な条件下にある作業道の路体強度をできるだけ多点測定し、各箇所の深さ方向にもある程度確認するため、比較的軽量で取り扱いも容易な「簡易動的コーン貫入試験法」で行いました。この試験は、簡易な地盤表層部の調査、小規模建築物基礎地盤の支持力判定などに幅広く用いられています。図-2に示した試験機を使用し、質量5㎏のハンマーを50cmの高さから自由落下させ、ロッドを深さ10cm貫入させるのに必要な打撃回数(Nd値)を求めます。Nd値は地盤調査に用いられる他の試験との関係が提案されており、N値(注1)へ換算することで、許容支持力の目安を知ることができます。
図-2 簡易動的コーン貫入試験機
出典:「地盤調査の方法と解説(地盤工学会2013)
図-3に既設作業道で測定したある測点におけるNd値を示します。10cmごとのNd値を深さ1mまで調べました。おおむね、図-3のように深くなるにつれてNd値は大きく(つまり強度が高く)なりますが、測点によっては、表層の20~30cmの強度は高いが、それより深い部分では強度が低くなっている箇所もありました。
また、図-4に既設作業道の任意の45測点における換算N値の頻度分布を示します。谷側わだち部分の1m平均N値です。平均N値が5以下の箇所が2か所(4%)、5~10の箇所が15か所(33%)ありました。調査対象地域は土質調査の結果から砂質地盤でした。砂質地盤におけるN値の支持力の目安では、N値が5以下の場合地盤は「非常に緩い」、10以下の場合「緩い」に区分されており、この路線では任意の測点中約40%において、締固めが「緩い」または「非常に緩い」状態にあることがわかりました。
(注1)N値とは、標準貫入試験によって得られる。質量63.5kgのハンマーを760㎜の高さから落下させ、SPTサンプラーと呼ばれる鋼製の円筒を300㎜打ち込むのに必要な打撃回数。
図-3 既設作業道のNd値測定結果(例) |
図-4 既設作業道における谷側わだち部の
1m平均換算N値の頻度分布
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◆おわりに
上記例の作業道では運材機械にフォワーダを使用していました。N値が5以上あれば、おおむねフォワーダの走行が可能です。しかし、作業道では運材と共に木寄せ作業も行うため、部分的に大きな力がかかる場合があります。また締固めが不十分な路面は降雨による浸食を受けやすく、大きな崩壊のきっかけにもなります。
作業の基盤となる作業道をできるだけ強固に作設してもらうため、今後もこの調査を行い、路体強度と地質や傾斜等の作業条件との関係を解析していく予定です。