搬出間伐の集搬作業における使用機械と生産性
林業研究所 野村久子
◆はじめに
効率的な森林整備を行うための集約化施業が推進され、それに伴い各地で機械化と作業道の整備が進められています。県内の高性能林業機械保有台数は平成27年度末時点で102台(平成20年度末の約2倍)、既設作業道延長は平成25年度末時点で約88万m(平成20年度末から約15万m増)となっています。徐々に森林整備のための基盤が充実する中、これらをいかに効果的に活用していくかが重要です。
林業研究所では県内に導入された高性能林業機械等の功程調査を行い、作業条件からの生産性予測や、機械の効率的な活用について研究を行っています。今回はその中から、集搬作業についてご紹介します。
図-1 フォワーダによる集搬作業状況
◆集搬作業の使用機械
集搬作業とは木材の集材搬出作業で、作業道または林内に集積された材をトラックの入る林道端や土場等まで運搬する作業工程です。地形に合わせて作設される森林作業道では、フォワーダのように登坂能力に優れた木材運搬車両が必要とされ、フォワーダは県内に最も多く導入されている高性能林業機械でした(高性能林業機械102台中37台がフォワーダ)。しかし、フォワーダは林内作業用の特殊車両であるため公道を走ることができません。そのためトラックが入れる施業地付近の山林に、木材を一旦仮置きする“山土場”が必要となります。
また、山土場から中間土場や市場まで材を運ぶ工程を運材作業といいます。集搬作業に必要な山土場を確保できない地域では、公道も走行可能な2tトラックを使用し、施業地から中間土場や市場まで材を直送していました。集搬作業と運材作業を合わせたような作業ですが、集搬作業の特殊な事例といえます。そこでこの2つの集搬機械について現場条件と生産性の関係を明らかにするための時間観測調査を行いました。
図-2 2tトラックによる集搬作業
◆集搬作業の作業功程
林内での積込み作業および土場での荷下ろし作業をビデオカメラで撮影し、要素作業分析を行うとともに、各調査車両にGPSロガーを搭載し、車両の動きを記録しました。
表-1に平均積載量と積込み・荷下ろし時間および平均走行速度を示します。どちらの機械も空走行(空荷の状態の走行)より実走行(材を積んだ状態の走行)の速度が遅く、2tトラックは公道での平均速度が公道以外での速度の約2倍となっていました。また、フォワーダと2tトラックの速度を比較すると、空走行では2tトラックはフォワーダの約2.5倍、実走行では2.7倍の速度で走行していました。フォワーダは2tトラックに比べ平均積載量が多く、接地圧が低いため悪路走行が可能ですが、走行速度が遅いことが欠点です。フォワーダ集搬においては運搬距離が長くなるほど生産性の低下が著しい状況が予想されました。
図-3 フォワーダ集搬における山土場での荷下ろし状況
◆集搬作業の生産性予測
これらの調査結果から生産性予測のための算定式を作成しました。
空荷で土場を出発した車両が山から木材を積んで土場へ戻り荷下ろしするまでの時間は、走行時間、木材の積込み・荷下ろし時間の合計であり、走行距離、走行速度、積載量、積込み・荷下ろし時間から算出することができます。
図-4は作成した算定式において距離を変数とした時の集搬距離と生産性の関係です。2tトラックに比べて積載量が多いフォワーダは運搬距離が短い間は2tトラックより有利な生産性を示しますが、走行速度が遅いため、距離が長くなるにつれ急激に生産性が低下していきます。この例では、運搬距離がおよそ2㎞を超えるとフォワーダより2tトラックの生産性が高くなり有利になるという結果となりました。しかし、2tトラックの公道と公道以外の走行距離割合は、調査結果の平均から3対2と仮定しているため、この割合が変化すると生産性にも影響し、“2㎞”という生産性の交差する点も変動していきます。
図-4 集搬作業の算定式による生産性の予測
◆おわりに
搬出間伐にはいくつもの工程があり作業条件も複雑なため、生産性やコストを予測するのは簡単ではありません。しかし、コストを知るということは、作業時間や必要作業員数を知ることであるため、年間の作業計画が立てやすくなり目標にもなります。林業研究所では今後も効率的な木材生産のための研究を行っていく予定です。