三重県産スギ・ヒノキ横架材スパン表が完成しました!
三重県林業研究所 萩 原 純
1.はじめに
県内のスギ・ヒノキの人工林資源は、林齢50年生以上が34%を占め、その蓄積量は2,100万m
一方、木造軸組工法による住宅の梁桁材にスギ・ヒノキが使われない理由の1つに、強度性能や乾燥に対する不安があると思われます。
このため、林業研究所では平成19年度から22年度までの4カ年間、県内産スギ・ヒノキ材が梁桁材として利用されやすくなることを目的に、強度性能試験を実施し、試験データに基づいた「三重県産スギ・ヒノキ横架材スパン表」の作成に取り組んできました。
この度、スギ横架材スパン表に加え、ヒノキについても横架材スパン表を作成しましたので、本稿ではこれを中心に使用方法等を説明します。
なお、スパン表はホームページで公表していますので、詳細はこちらからご覧ください。
三重県林業研究所:http://www.mpstpc.pref.mie.lg.jp/RIN
2.スパン表作成に向けた試験方法
試験体として、65℃以下の中温で人工乾燥された県内産ヒノキ平角材(幅120×高さ210×長さ4,000mm)185本を購入し、使用しました。
縦振動法による動的ヤング係数、年輪幅、節径比等を事前に計測するとともに、(財)日本住宅・木材技術センターの「構造用木材の強度試験法」に準拠し、3等分点4点荷重方式により支点間距離3,780mm、荷重点間距離1,260mmに統一して荷重スピード15mm/分で曲げ試験を行い、曲げヤング係数、曲げ強度を算出しました。
3.試験結果の概要
曲げ強度試験結果は、JAS機械等級区分に従うと、E110が92本(50%)で最も多く、次いでE90(22%)、E130(21%)の順でした。ヤング係数の平均値は10.7kN/mm
機械等級区分に用いるヤング係数は、試験材をハンマーなどで打撃した時の打撃音の縦振動周波数を用いて求める動的ヤング係数と、材に直接荷重を掛け、その時のたわみ量との関係から求める静的ヤング係数があります。どちらの方法でも同様の値が得られることが従来から知られており、今回の試験結果でも高い相関係数が認められたことから、いずれの方法でも、梁桁材の機械等級区分を行って、スパン表を利用することが可能です。
図-1は、静的ヤング係数と曲げ強度関係を示しています。一般的にいわれるように、静的曲げヤング係数と曲げ強度の間には、正の相関関係が認められた(相関係数r=0.641、0.1%水準で有意)ことから、E90~E130について等級区分別に、誘導基準強度を求めました。(各等級に区分された試験材強度の5%下限値、信頼水準75%)。
表-1に示すように、今回の試験で求めた誘導基準強度は、建設省告示の基準強度を上回る結果となり、今回のスパン表作成に用いた試験材は、強度条件を満たしていると言えます。
表-1 機械等級区分と曲げ強度(ヒノキ)
図-1 ヒノキ曲げ強度試験結果
4.ヒノキスパン表の適用範囲
主な適用範囲は、次のとおりです。
①2階建て以下及び延べ床面積500m
②矩形で無垢の県内産ヒノキ材
③スパン途中に継ぎ手のない単純梁
④床小梁、床大梁、胴差、小屋梁、軒桁
⑤モジュールは910mm
⑥積雪条件は一般地
5.ヒノキスパン表の利用にあたって
(1)スパン表における断面の寸法は、代表的な条件を設定し建築基準法で定められた許容応力度計算により算出していますが、部材の使用条件が当スパン表の設定条件より安全側でなければ使用することができません。
このため、間違いなく使っていただけるよう使い方のフローチャートを掲載しています。
(2)当スパン表で使用できる部材は、県内産ヒノキで含水率20%以下の乾燥材です。
(3)部材の等級は、機械等級区分に従い、E90、E110、E130を適用してください。(但し、スギの場合は、E70、E90、E110です。)
なお、県内ではJAS認定工場が少なく、梁桁材を機械等級区分できるグレーディンマシンの導入が少ない状況にあります。
このため、機械等級区分された材でなくても建築家の皆様方により多くの梁桁材を使用していただけるよう、当スパン表に無等級区分(E90G)も設定しています。
(4)また、接合部の補強の必要性を明示する、注意喚起を行うため、梁材端部の反力を表示していますので参考にしてください。
(5)樹種の選定にあたっては、一義的には施主の意向に沿って決定することになりますが、特段材料指定がない場合はスギ材スパン表と対比しながら使用してください。
両樹種を同一の使用条件(機械等級区分E90、E110)で比較すると、944の組み合わせのうち98.6%で両者は同一の“せい(断面)”となります。
(6)当該スパン表に係る部材の断面は最小寸法を示したもので、たわみ制限や断面欠損なども最小値で計算しています(図-2)。
このため、状況に応じてワンサイズ大きなサイズで安全側の設計を採用するなどの方法を検討してください。
図-2 ヒノキ横架材スパン表の一例(床小梁)