2.非病原性フザリウム菌によるトマト根腐れ萎凋病の生物防除
黒田克利・冨川章
非病原性フザリウム菌を用いたトマト根腐れ萎凋病の生物防除について検討し、以下の結果を得た。
- 土壌から分離したフザリウム菌のトマト根腐れ萎凋病に対する防除効果をトマト幼植物を用いる方法により検定し、さらに作物に対する病原性を検定した。その結果、高い防除効果を示し、作物に病原性を示さない非病原性フザリウム菌(MFM3菌)が得られた。
- MFM3菌と参考した非病原性フザリウム菌としてF13菌を供試し、実際のロックウール栽培で根腐れ萎凋病の防除効果を検討した結果、育苗期である播種時と仮植時に非病原性フザリウム菌を105bud-cells/cm3の菌密度になるように接種すると、本圃での発病が遅延、軽減され、高い防除効果が確認された。
- ポット試験による土耕栽培試験では、非病原性フザリウム菌(MFM3菌、F13菌)による根腐れ萎凋病の防除効果が認められた。
- 非病原性フザリウム菌は、トマト苗の茎に注入接種すると接種部に上下に移行し、接種部から離れた茎先端部でも高率の生存が、さらにまた、幼苗期に根圏に灌注接種すると、根からトマト体内に侵入し、根圏にとどまらず全体に移行し生存することなどが明らかになった。