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平成21年01月27日

研究報告第24号

1.ナナホシテントウによるイチゴのアブラムシ類の防除

大久保憲秀・北上達

ナナホシテントウを使った生物的防除技術を開発するため、幼虫の放飼適齢期及び放飼必要個体数を検討したところ、2齢幼虫をアブラムシ密度の10%程放飼するのがよいと思われた。また放飼圃場のナナホシテントウに対する農薬の影響を明らかにするため、イチゴの主要薬剤の殺虫力を検定したところ、ほとんどの農薬に殺虫力が認められた。

2.紫外線とセラミックスを併用した養液栽培の培養液殺菌システムによるトマト根腐萎ちょう病制御

黒田克利・河野満・冨川章

紫外線・セラミックス併用殺菌装置を試作し、トマトのロックウール栽培に組み込み、トマト根腐萎ちょう病菌を保菌した排液を同装置により殺菌後再利用した場合の、本病の感染防止効果を検討した。本装置は排液を集める槽、セラミックスろ過槽および紫外線殺菌装置により成り立つ。紫外線殺菌装置には殺菌灯として9本のUVCランプを使用し、処理量が毎分20Lの場合、紫外線照射量は575、200μW・秒/cm2である。セラミックスろ過槽に直径5mmと9mmの球状のセラミックスを充填した。セラミックスは栽培期間中に生じる排液中の植物残渣等を効率的に除去し、排液の紫外線透過率の低下を抑え、紫外線の殺菌効果を長期間維持する効果がある。同装置によりトマト根腐萎ちょう病菌を保菌した排液を殺菌したところ、同菌が定植後144日間の長期間確認されなかった。さらに、同菌を保菌した排液を殺菌後再利用したが、本病の発病がみられず高い効果を示した。

3.極早生ウンシュウの隔年交互着果利用技術の確立

大野秀一・一ノ木山浩道・清水秀巳・出岡裕哉

極早生ウンシュウを用い、高品質果実の安定生産と省力化を同時に図るため、園地を着果準備年と着果年に区分し、交互に着果させることにより連年生産園と同等の収量を上げるため2ヶ年を1サイクルとした栽培法について検討した。
準備年における優良夏枝母枝確保のための適正なせん定時期、1樹当たり適正夏枝母枝数について検討を行ったところ、せん定時期は3月が良く、1樹当たりの適正な夏枝母枝数は40本(m2当たり9本)以上であった。
適正な着果量を見いだすための葉果比、適正な夏枝母枝の長さ等の検討では、葉果比は20程度が良く、夏枝母枝は強めの40程度の水平に近いものが良かった。
隔年交互着果法に適する施肥体系及び地力に応じた施肥法の検討では、着果年に無施肥とするより施肥する体系が良かった。また、熟畑化の程度に応じて施肥することが重要と考えられた。
総括すると、慣行栽培と比べ果実肥大、収量はやや劣るが、収穫時期は4~5日早まり、また、果実品質は差がなく、均質なものが揃いやすいことが認められた。

4.チャ新品種「みえ緑萌1号」の育成

池田敏久・大谷一哉・橘尚明・吉田元丈

お茶の嗜好の多様化と早、中、晩性品種の組合せ栽培用とし、適採期が「やぶきた」より5日程度遅い「みえ緑萌1号」を育成した。この品種は「やぶきた」の自然交雑による実生から選抜した。樹勢は強く、株張りの良好な多収性品種である。荒茶品質は色沢、香気が優れている。この品種は煎茶及びかぶせ茶用として適している。

5.混合飼料給与による和牛雌牛肥育技術の確立 体積系統牛の適正栄養水準と除角の効果について

山田陽稔・榊原秀夫

混合飼料の飽食給与による、黒毛和種雌牛(体積系統)の肥育技術を確立するため、72週間の肥育期間における前期(24週)後期(24週)の混合飼料の乾物当たりTDN水準について検討した。増体及び飼料効率等を考慮して、肥育期間を72週間とした場合には、飽食給与では肥育前期、中期の混合飼料の乾物当たりTDN水準において、64~72%、70~74%の間では差はなかった。今回の大分県産の雌牛は、一日あたり増大量(以下DG)は0.67kg、飼料乾物摂取量は7.73kg/日及びTDN要求率は8.2kgであった。
枝肉成績では給与混合飼料のTDNの変化が中、後期の飼料摂取量と各期の増体に影響し、更にロース芯面積及び第6~7肋骨断面脂肪部分割合等にまで影響することが示唆された。今回設定した混合飼料のTDN水準のパターンでは、中期、後期の飼料摂取量は多く、第6~7肋骨断面脂肪部分割合の増加は来すものの、ロース芯面積、バラ厚等の増加から歩留基準値を高くできる前期64、中期74、後期78のパターンが体積系統牛に適したものと思われた。
また、この試験の中で群飼育での除角の効果について検討したところ、除角は牛群の増体の変動係数を小さくし、増大量も高い傾向にあり、飼料効率も向上させた。枝肉成績ではロース芯面積が大きくなり、肉質等級のBMSナンバー、きめ、しまり等級を上昇させる効果があった。

6.水田農業における集落診断・計画支援システムの開発

坂本登・糀谷斉

集落モデル営農形態を試作するシステムを開発した。このシステムは、水稲・小麦・大豆を生産する集落において、集落診断の基づいた農業改善計画の作成を支援し、集落条件の入力、経営形態の入力・変更、経営指標の出力などのモジュールで構成されている。現状の集落農業の構造を変えた場合に、集落やそれを構成する各農家の経営指標がどのように変化するかを数量的に計算する。このシステムを用いることによって、集落条件に応じた新しい農業構造や経営形態を策定することができる。

7.森林からの降雨の流出に関する考察

磯島義一

宮川流域における森林から流出する洪水量の流出率を算定した。降雨があると森林から雨水が流れ込み、河川の水位は上昇する。晴天が続くと、洪水量は時間の経過と共に減少する。この減少をQ(t)=Q1/tKで表したところ、大体実際のデータに近い値を得た。
ひとつの降雨があるとき、降雨当日の流量をQ1、2日目にQ2、・・・・30日目にQ30とすると、降雨当日の流出率fはf=Q1/(Q1+Q2+・・・・・+Q30)となる。
一級河川宮川の雨量と洪水量の過去30年間のデータより、常数kの値は1.4~2.0の範囲にあった。
その結果、宮川流域の森林から流出する流出率は0.4から0.6の範囲にあった。
通常排水路を計画するとき、森林からの流出率は0.7の値を使うことがある。降雨や流域の条件によって異なるが、0.6の数値を使えば少しは経済的な排水路の設計ができる。

8.パソコンによる排水樋門の出し入れ計算技術

磯島義一

山林や耕地に降った雨水は排水路を通じ、樋門から海へ流出する。潮が満ちてくると外水位は高くなり、樋門は閉じる。干潮になると、外水位は低下して樋門が開き、内水位は低下する。
この操作はコンピュータープログラムを作成することにより、従来手計算で行っていた土地改良工作物の計画設計と比べて、迅速にできる見通しがついた。

9.水稲の乾田直播と大区画圃場の課題

磯島義一・西口進

試験のため、農家の圃場で大区画圃場を造成して、水稲の乾田直播栽培の実証を行った。代掻きを行わず、4月中旬ごろ直接圃場に播種を行うと、5月上旬ごろ発芽し、5月下旬から入水する栽培法である。
漏水量が多く、日減水深は45mmを越え、付近の圃場の2倍以上の用水を必要とした。今後漏水量を少なくすることが課題である。

10.三重県の農耕地土壌に関する研究(第6報)有機物連用処理が水田土壌と水稲収量に及ぼす影響

出岡裕哉・宮林威佐夫・山口千香子・中川智仁・石川裕一・安田典夫

細粒灰色低地土の水田ほ場において1976年以来19年間有機物連用処理を行い、土壌の理化学性、水稲の生育収量、養分吸収に及ぼす影響について明らかにした。

  1. 稲わら及び牛ふん施用区では、全炭素及び全窒素の土壌への集積が進み、集積量では牛ふん区で最も多かったが、窒素残存率についてみると稲わら施用の方が高かった。また、土壌のCN比は処理区間に差はなく、連用を行ってもほぼ一定に保たれた。
  2. 可給態窒素は全炭素及び全窒素との正の相関関係が認められた。また、稲わらと併用してケイカル、熔リンを施用し、総合改善区では、化肥+稲わら区と比較すると、全窒素及び全炭素の土壌への集積が抑えられ、可給態窒素量も低かった。
  3. 水稲収量は、19作平均で化肥単用区を100とすると、無窒素で25.2%減、化肥+稲わら区で0.4%減、総合改善区で5.8%増、牛ふん区で3.7%減となった。総合改善区では安定的に収量が高かった。
  4. 有機物のみを連用した場合、可給態窒素量が12mg/100gを越えると収量の増加には結びつかず、化学肥料単用に対比した場合、施肥窒素の減量が必要であると考えられた。
  5. 以上の結果から、水田への有機物施用は稲わらと牛ふんとも地力の維持増強効果は大きいが、収量の増加には結びつかず、収量の高位安定化という点から見ると、稲わらとケイ酸質資材の併用が必要と考えられた。

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